日本全国で派遣社員の有給管理が複雑になる理由と、派遣会社が押さえるべき運用のコツ
2026.02.10
― 社会保険労務士が解説 ―
導入:派遣会社にとって「有給管理」はなぜ悩みの種なのか
日本全国の派遣会社から、社会保険労務士として非常に多く寄せられる相談の一つが、派遣社員の有給休暇管理です。
「派遣先が有給を嫌がる」「5日取得義務の管理が追いつかない」「営業と管理部門で認識がズレている」など、現場では日常的に課題が発生しています。
派遣事業は、
- 雇用主:派遣会社
- 指揮命令:派遣先
という二重構造で成り立っています。
この構造こそが、有給管理を難しくし、派遣会社側にリスクを集中させている最大の要因です。
本記事では、派遣会社が主体的に有給管理を行うための考え方と実務のコツを、日本全国共通の視点で解説します。
日本全国で派遣社員の有給管理が複雑になる理由と重要ポイント
派遣社員の有給管理責任は「すべて派遣会社」にある
まず明確にしておくべき点は、派遣社員の有給休暇を付与・管理する法的義務は、すべて派遣会社(派遣元)にあるということです。
派遣先には、有給付与や残日数管理の義務はありません。
しかし実務では、
- 勤怠管理は派遣先任せ
- 有給取得の調整も派遣先任せ
- 派遣社員からの相談は営業担当経由
といったように、派遣会社側が実態を把握しきれていないケースが多く見られます。
派遣先変更が多く「継続勤務」の管理が煩雑
派遣社員は、同じ派遣会社に雇用されながら、派遣先を変えて就業することが一般的です。
この場合でも、派遣会社との雇用関係が継続していれば、有給休暇は原則として引き継がれます。
ところが実際には、
- 派遣先が変わったからゼロ扱い
- 契約更新のたびにリセット
- 営業担当ごとに判断が違う
といった誤った運用が、日本全国の派遣会社で散見されます。
これらは労基署調査や派遣社員からの申告時に、派遣会社側の重大なリスクとなります。
年5日取得義務の管理が派遣会社に集中する
2019年から義務化された年5日の有給休暇取得義務は、派遣社員にも当然適用されます。
そして、この義務を負うのも派遣会社です。
派遣先が「忙しい」「代替がいない」と言っても、未取得の責任を問われるのは派遣会社です。
この点を正しく理解していない派遣会社は、非常に危険な状態と言えます。
派遣会社が必ず押さえるべき有給管理の注意点
「派遣先がダメと言った」は通用しない
派遣会社の現場でよく聞かれるのが、
「派遣先が有給を認めてくれなかった」
という言葉です。
しかし、労働基準法上、派遣先の都合で有給取得を制限することは認められていません。
派遣会社は、派遣先に対して法令順守を求める立場にあります。
派遣先との力関係を理由に有給管理を曖昧にすると、結果的にリスクを負うのは派遣会社自身です。
営業任せの有給管理は危険
派遣会社では、営業担当が派遣社員の窓口になるケースが多くあります。
しかし、有給管理を営業任せにしてしまうと、
- 法的知識不足
- 判断基準のバラつき
- 記録が残らない
といった問題が発生しやすくなります。
有給管理は、労務管理として本社・管理部門が主導すべき分野です。
勤怠データの不備は重大なリスク
派遣先からの勤怠報告が遅い・不正確といった状態では、
- 有給付与日数
- 取得義務の進捗
を正確に管理できません。
派遣会社は、派遣先との契約段階で、
勤怠データ提供のルールを明確にしておく必要があります。
派遣会社が有給管理を適切に行うメリット
労基署対応・是正勧告リスクを大幅に減らせる
派遣事業は、労基署・労働局のチェックが入りやすい業種です。
特に有給管理は、調査時に必ず確認される項目です。
適切な有給管理体制を整えておくことで、
- 是正勧告
- 指導票
- 事業停止リスク
を未然に防ぐことができます。
派遣社員との信頼関係が強化される
有給が適切に管理されている派遣会社は、派遣社員からの信頼が高まります。
結果として、
- 定着率の向上
- クレーム減少
- 紹介・口コミの増加
といった経営面でのプラス効果も期待できます。
全国展開でも統一運用が可能になる
有給管理ルールを明文化・統一することで、
- 支店ごとの差
- 担当者ごとの判断差
を最小限に抑えることができます。
これは、日本全国で派遣事業を行う会社にとって大きな強みです。
派遣会社向け|派遣社員の有給管理を成功させる運用のコツ
有給管理は「派遣会社主導」で仕組み化する
派遣社員の有給管理は、
属人化させず、仕組みとして管理することが重要です。
- 有給付与日・残日数を一元管理
- 5日取得義務の進捗を自動チェック
- 派遣先・派遣社員への定期的な通知
こうした体制を整えることで、管理負担を大幅に軽減できます。
派遣先向け説明資料を準備する
派遣先が有給制度を誤解しているケースは少なくありません。
そのため、
- 派遣社員の有給は派遣会社が管理する
- 有給取得を妨げてはいけない
といった内容をまとめた派遣先向け資料を用意しておくと、トラブル防止に非常に有効です。
社会保険労務士を顧問として活用する
派遣社員の有給管理は、
- 労働基準法
- 派遣法
- 就業規則・36協定
などが複雑に絡み合います。
派遣会社が独自判断で運用するのはリスクが高いため、社会保険労務士の継続的なサポートが有効です。
まとめ:派遣会社こそ「有給管理の主役」であるべき
日本全国で派遣社員の有給管理が複雑になる最大の理由は、
派遣会社が本来担うべき管理を、派遣先や現場に委ねてしまっている点にあります。
派遣会社が主体的に、
- 管理ルールを明確にし
- 派遣先と対等に協議し
- 専門家の知見を取り入れる
ことで、有給管理は「負担」から「強み」へと変わります。
派遣会社が社会保険労務士に相談する理由(日本全国対応)
派遣社員の有給管理について、
- 現行運用が法令に適合しているか
- 年5日取得義務に漏れがないか
- 派遣先との契約内容に問題がないか
を客観的に確認するには、社会保険労務士のチェックが不可欠です。
日本全国対応での相談も可能ですので、派遣社員の有給管理に不安がある派遣会社様は、早めに専門家へ相談することをおすすめします。
当事務所は初回のご相談は無料です。ホームページのお問合せよりご連絡ください。
ブログ最新記事
- 日本全国で派遣社員の有給管理が複雑になる理由と、派遣会社が押さえるべき運用のコツ
- 【派遣会社向け】同一労働同一賃金セミナー動画を公開しました|料金交渉・労使協定の実務解説
- 労使協定方式の賃金テーブルはどのように作成すべき?同一労働同一賃金への実務対応を徹底解説
- 日本全国の派遣元責任者が直面する「契約書の更新漏れ」問題とは
- 社会保険加入基準とは?派遣スタッフに適用されるルールをわかりやすく解説
- 日本全国の派遣会社が直面する「同一労働同一賃金」対応の実務ステップ
- 【新着記事のお知らせ】派遣事業報告書(第2面)の作成について
- 【明日開催】2026年度 派遣同一労働同一賃金 労使協定セミナーのご案内
- 派遣先均等・均衡方式と労使協定方式の違いを徹底解説|同一労働同一賃金で失敗しない選び方
- 派遣元が注意すべき「安全衛生教育の欠落」による契約解除トラブル
カテゴリ別
- 助成金 ( 18 )
- 法改正情報 ( 34 )
- 官公庁からのリリース ( 23 )
- 給与計算 ( 4 )
- 採用・求人 ( 7 )
- 時事ニュース ( 77 )
- 横浜エリアイベントトピックス ( 15 )
- お客様をご紹介! ( 28 )
月別記事
- 2026年2月 ( 8 )
- 2026年1月 ( 21 )
- 2025年12月 ( 22 )
- 2025年11月 ( 12 )
- 2025年10月 ( 14 )
- 2025年9月 ( 13 )
- 2025年8月 ( 8 )
- 2025年7月 ( 2 )
- 2025年6月 ( 1 )
- 2025年4月 ( 1 )
- 2025年3月 ( 1 )
- 2025年2月 ( 1 )
- 2025年1月 ( 1 )
- 2024年12月 ( 2 )
- 2024年11月 ( 1 )
- 2024年10月 ( 1 )
- 2024年9月 ( 2 )
- 2024年7月 ( 1 )
- 2024年6月 ( 1 )
- 2024年5月 ( 3 )
- 2024年4月 ( 1 )
- 2024年3月 ( 3 )
- 2024年2月 ( 2 )
- 2024年1月 ( 1 )
- 2023年12月 ( 1 )
- 2023年11月 ( 1 )
- 2023年10月 ( 1 )
- 2023年9月 ( 1 )
- 2023年8月 ( 1 )
- 2023年7月 ( 2 )
- 2023年6月 ( 1 )
- 2023年4月 ( 1 )
- 2023年3月 ( 2 )
- 2023年1月 ( 2 )
- 2022年11月 ( 1 )
- 2022年10月 ( 1 )
- 2022年9月 ( 1 )
- 2022年8月 ( 1 )
- 2022年7月 ( 1 )
- 2022年6月 ( 1 )
- 2022年4月 ( 1 )
- 2022年3月 ( 1 )
- 2022年2月 ( 1 )
- 2022年1月 ( 1 )
- 2021年12月 ( 1 )
- 2021年11月 ( 1 )
- 2021年10月 ( 1 )
- 2021年9月 ( 1 )
- 2021年8月 ( 1 )
- 2021年7月 ( 1 )
- 2021年6月 ( 1 )
- 2021年5月 ( 1 )
- 2021年4月 ( 1 )
- 2020年9月 ( 1 )
- 2019年9月 ( 1 )
- 2019年2月 ( 1 )
- 2018年11月 ( 1 )
- 2018年7月 ( 1 )
- 2018年4月 ( 1 )
- 2018年1月 ( 1 )
- 2017年12月 ( 1 )
- 2017年11月 ( 2 )
- 2017年10月 ( 2 )
- 2017年9月 ( 1 )
- 2017年8月 ( 1 )
- 2017年6月 ( 1 )
- 2016年10月 ( 1 )
- 2016年9月 ( 2 )
- 2016年8月 ( 2 )
- 2016年4月 ( 4 )
- 2016年3月 ( 1 )
- 2016年1月 ( 1 )
- 2015年11月 ( 2 )
- 2015年10月 ( 1 )
- 2015年9月 ( 1 )
- 2015年8月 ( 1 )
- 2015年7月 ( 3 )
- 2015年6月 ( 3 )
- 2015年3月 ( 2 )
- 2015年2月 ( 6 )
- 2014年12月 ( 1 )
- 2014年11月 ( 1 )
- 2014年10月 ( 1 )
- 2014年9月 ( 3 )
- 2014年8月 ( 1 )
- 2014年7月 ( 3 )
- 2014年6月 ( 1 )
- 2014年4月 ( 3 )
- 2014年3月 ( 1 )
- 2014年2月 ( 2 )
- 2013年12月 ( 2 )
- 2013年11月 ( 1 )
- 2013年10月 ( 3 )
- 2013年9月 ( 1 )
- 2013年8月 ( 7 )
- 2013年7月 ( 7 )
- 2013年6月 ( 5 )
- 2013年5月 ( 11 )
- 2013年4月 ( 1 )
- 2013年1月 ( 7 )
- 2012年12月 ( 3 )
- 2012年11月 ( 5 )
- 2012年10月 ( 5 )
- 2012年9月 ( 4 )
- 2012年8月 ( 6 )
- 2012年7月 ( 8 )
オンライン講座「今さら聞けない派遣110番!」
サービス内容について
オンライン講座「今さら聞けない派遣110番!5分でわかる派遣実務講座」は派遣元・派遣先責任者講習の人気講師がこそっと教える、実践的な講座です。
派遣元責任者、派遣先責任者だけでなく派遣事業に関わる全ての方に受講をおすすめします! 毎週動画をアップしますので、好きな時に好きな講座の動画をご覧いただけます。
セミナー、研修、講演開催
料金について
| セミナー、研修、講演 | 1時間10万円定額制 |
|---|
講演内容、業種、出席者数に関わらず、すべて定額の時間単価とさせて頂きます。業界きっての画期的な明朗会計です。
「予め料金が分かっているので、安心して申し込めます」
「料金交渉が不要で助かります」
「時間単価は一定なので、研修時間数を調整すればいいから、予算との折り合いも簡単にできます」
などなど、多くのお客様に喜ばれております。
セミナーについて
当事務所セミナー会場(27Fスカイラウンジ)で、当事務所が独自にテーマを設定し、お申し込み頂いた、複数の会社様にご参加頂くものです。
セミナー開催実績例
- 介護事業者様向け「改正介護保険法セミナー」
- 介護事業者様向け「介護労働環境向上奨励金セミナー」 3回
- 新規採用をお考えの事業者様向け
「元ハローワーク職員が教える!求人助成金セミナー」 - 飲食店様向け「元ハローワーク職員が教える!求人助成金セミナー」
講演について
当事務所代表が会社様や、ご同業者の集まりに訪問し、ご依頼されたテーマ(一般的な課題)について原稿を作成し、講演するものです。
講演実績
日本経営開発協会様 御紹介
市川港開発協議会様 主催 研修
「マイナンバー通知開始!
今知りたいマイナンバー制度の傾向と対策」
【参加者様からのお声】
- 非常に分かりやすく、90分飽きさせることのない素晴らしいものだった。
- 非常に役に立ち、興味が持てる内容だった。
- 普段は講義に集中するのは難儀なのだが、話のスピード、声のトーン、間、どれを取っても感心するばかりだった。
- マイナンバーが今後いろいろな問題を引き起こす可能性があることがよくわかり、大変勉強になった。早期に確実な運用体制を社内に確立させなければと思った。
一般社団法人 港湾労働安定協会 様 主催
雇用管理者研修「職場のメンタルヘルスに関して(会社を守る職場のメンタルヘルス対策)」
【参加者様からのお声】
- メンタルヘルス対策は今後も重要になってくると思うので、このような研修会を増やして貰いたい。
- 社会保険労務士による内容を次回もお願いしたい。
- メンタルヘルス関係で初めて面白い(役に立つ)情報が聞けたと思います。
- 大変に良い研修ですので、これからも続けて貰えるとありがたいです。
- 中間管理職として守るべきというか、部下に対してどのような人事労務管理をすればよいのか、中小企業向けに別途講習会をやってほしいと思った。
- 株式会社LEC 様 主催
「介護雇用管理研修」業務委託登録講師 - 株式会社フィールドプランニング 様 主催
「派遣元・派遣先・職業紹介責任者講習」業務委託主任講師 - 神奈川韓国商工会議所様 主催
経営者セミナー「お役立ち助成金講座
(雇用の確保と5年ルールへの対応策)」 - 日本経営開発協会様 御紹介
株式会社根布工業様 主催
安全大会「入ってないと、どうなっちゃうの?社会保険のこわ~いお話」
泉文美 講師紹介ページ
研修について
当事務所代表が、会社様のご依頼に基づき、会社様の具体的な人事労務に関わる内容(個別事案)について、オーダーメイドのプログラムを作成し、社員の皆様に研修するものです。
研修のご依頼例
- 就業規則を変更したので、わかりやすい説明会を開いてほしい
- 給与規定を見直したので、従業員に説明をしてほしい
- 従業員向けの、接客マナー、敬語などのレッスン会をしてほしい
執筆のご依頼
雑誌・メルマガ、HPコラムなど、ご希望に沿ったテーマで記事を執筆いたします。
掲載履歴
HP記事執筆
ハッケン!リクナビ派遣に「働き改革!派遣社員が選べるふたつの雇用とは」と題する記事を執筆しました。
「近代中小企業」2月号
「近代中小企業」2月号に記事を執筆しました。
「元ハローワーク職員が教える!ハローワーク求人&助成金活用法」
「SR」 9月号
ハローワークを始め、社会保険事務所(現:年金事務所)、労働基準監督署でも勤務経験を持ち、「お役所の裏事情に詳しい社労士」として定評のある我がみなとみらい人事コンサルティング代表。
ハローワークでの勤務経験を買われ、日本法令様出版の「SR 9月号」に記事を執筆しました。
(第27号 2012年8月6日発売)


