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2026年カスハラ対策義務化で何が変わる?派遣会社が今すぐ取り組むべきこと   2025.10.15

### 1. はじめに:カスハラ防止が「企業の義務」になる時代へ 

 

2026年中に施行予定の「改正労働施策総合推進法」によって、 

企業は「カスタマーハラスメント(カスハラ)」防止のための措置を講じることが義務化されます。 

 

これまでは、パワーハラスメント(パワハラ)やセクシャルハラスメント(セクハラ)など、 

社内で起きるハラスメントに対して企業の防止義務が定められていました。 

しかし、「顧客から従業員に対するハラスメント」に関しては、明確な法的義務は存在していませんでした。 

 

つまり、「お客様からの暴言」「過度なクレーム対応」「人格を否定するような要求」など、 

従業員が日常的に受けていた精神的負担に対して、企業として守るための仕組みが不十分だったのです。 

 

改正法の成立により、カスハラはようやく法の下で正式に「防止義務の対象」となりました。 

これは、職場におけるメンタルヘルスや安全配慮義務の観点からも、非常に大きな一歩です。 

 

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### 2. カスハラとは?その定義と派遣現場の実情 

 

「カスタマーハラスメント(カスハラ)」とは、 

顧客が企業やその従業員に対して、社会通念を超える不当な言動を行うことを指します。 

 

典型的な事例としては、次のようなケースが挙げられます。 

 

- 暴言や威圧的な態度を繰り返す 

- 不当な要求を執拗に続ける 

- 長時間にわたってクレーム対応を強要する 

- SNSなどでの誹謗中傷 

- 人格を否定するような言葉を投げつける 

 

派遣スタッフの現場では、特に「派遣先の顧客」からこうした行為を受けるケースが少なくありません。 

しかし、多くのスタッフは「お客様だから仕方ない」「派遣先との関係を悪くしたくない」といった理由から、 

我慢してしまう傾向にあります。 

 

結果として、心身の不調や離職につながるケースもあり、 

企業にとっては“見えないコスト”として大きな損失となっています。 

 

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### 3. 改正法の概要:企業に求められる対応 

 

今回の改正では、以下の3点が企業に求められます。 

 

#### ① 防止方針の明確化 

カスハラに対する企業の基本的な考え方を明文化し、 

全従業員が理解できる形で共有する必要があります。 

社内ポリシーや就業規則に明記し、派遣先企業とも共有することが望まれます。 

 

#### ② 相談体制・窓口の整備 

被害を受けた従業員が安心して相談できる窓口を設けることが義務化されます。 

担当者は守秘義務を持ち、適切な対応・助言を行う体制を整えることが求められます。 

 

#### ③ 実効性の確保 

単に「方針を掲げただけ」では不十分です。 

教育・研修・マニュアル整備などを通じて、実際に防止策が機能するように運用することが必要です。 

 

罰則規定は設けられていませんが、行政指導や公的評価、さらには取引先からの信用など、 

実質的な社会的リスクを考えれば「やらない理由はない」と言えるでしょう。 

 

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### 4. 同時改正:女性活躍推進法・男女雇用機会均等法 

 

今回の法改正では、「女性活躍推進法」や「男女雇用機会均等法」に関しても重要な変更が行われました。 

 

#### 女性活躍推進法の改正 

従業員101人以上の企業に対し、 

「女性管理職比率」と「男女の賃金差異」の公表が義務付けられます。 

施行は2026年4月1日。 

 

企業の透明性がより一層求められ、 

「人材の見える化」を進めることが社会的責任となっていきます。 

 

#### 男女雇用機会均等法の改正 

採用活動中の学生に対するセクハラ防止も義務化されました。 

特に採用担当者や面接官に対しては、明確なルールや教育体制の整備が必要です。 

 

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### 5. 派遣会社が取るべき3つの実務対応 

 

派遣会社にとって、今回の改正は“自社内の体制整備”だけでなく、 

“派遣先との協力体制”が極めて重要になります。 

 

#### ステップ①:現場の声を聞く 

まずは、派遣スタッフ・営業担当・管理職などから、 

現場で実際にどのような顧客対応が行われているかをヒアリングします。 

「カスハラを受けたけど報告しなかった」というケースがないか確認することが第一歩です。 

 

#### ステップ②:方針とマニュアルの整備 

カスハラの定義や対応手順、報告ルート、派遣先への連絡方法などを具体的に文書化します。 

派遣契約書には「カスハラ防止における協力条項」を盛り込むことで、 

派遣元・派遣先双方の責任範囲を明確にできます。 

 

#### ステップ③:教育と啓発 

派遣スタッフ・営業担当・派遣先責任者など、立場ごとに適切な研修を実施します。 

「我慢する」文化から「報告・相談する」文化へ。 

相談しやすい環境をつくることで、問題の早期発見・再発防止につながります。 

 

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### 6. カスハラ対策のポイント:派遣先との連携が鍵 

 

派遣会社単独での対応には限界があります。 

実際にカスハラが発生する現場は、派遣先企業であることがほとんどです。 

 

そのため、派遣契約時や定例ミーティングなどを活用し、 

派遣先と共に「カスハラ防止方針」を共有することが不可欠です。 

 

派遣スタッフが安心して働ける環境を整えることは、 

派遣先にとっても定着率の向上や生産性の向上につながるメリットがあります。 

 

企業同士の協働で、より良い就労環境を築いていくことが理想です。 

 

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### 7. カスハラ対策を「義務」から「企業文化」へ 

 

今回の改正は単なる法令対応ではありません。 

「従業員を守ること」が「企業を守ること」に直結する時代が来ています。 

 

カスハラ防止を経営課題として位置づけることで、 

企業のブランド価値や採用力も確実に向上します。 

 

従業員が安心して働ける環境を整えることは、 

結果的に顧客満足度やサービス品質の向上にもつながります。 

 

「法に従う」だけでなく、「人を守る文化をつくる」ことが、 

今後の企業経営における重要な視点になるでしょう。 

 

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### 8. フリーランス保護にも広がる議論 

 

改正法の付則には、「フリーランスとして働く人の保護を検討する」と明記されています。 

働き方の多様化が進む中で、雇用関係にない立場の人たちに対しても、 

ハラスメント防止や安全配慮が求められるようになる可能性があります。 

 

派遣会社としても、業務委託契約を結ぶ外部人材への対応を見直すきっかけになるでしょう。 

 

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### 9. 社労士の視点:法令対応と現場運用の“橋渡し”を 

 

社会保険労務士として感じるのは、制度ができても「現場で機能しない仕組み」が多いということです。 

たとえば、「相談窓口を設けたけれど、誰も使わない」「報告しても対応が遅い」など、 

運用面での課題が必ず発生します。 

 

大切なのは、“制度を現場で活かすこと”。 

 

そのためには、 

- 実際の相談対応フローを明確にする 

- 担当者教育を継続的に行う 

- 相談内容を匿名で共有し、再発防止に生かす 

といった地道な仕組みづくりが必要です。 

 

社労士としては、 

就業規則・派遣契約・研修・相談体制の整備など、 

「制度設計+運用支援」の両面から企業をサポートしていくことが求められます。 

 

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### 10. まとめ:2026年に向けた「守るための準備」を今から 

 

2026年のカスハラ防止義務化は、 

すべての企業に「従業員を守る経営」を求める流れの象徴です。 

 

派遣会社にとっては、 

スタッフの安全と働きやすさを守ることが、 

結果的にクライアント企業の信頼や自社の成長にもつながります。 

 

「お客様は神様」という時代から、 

「お客様も従業員も大切にする時代」へ。 

 

今こそ、自社の現場を見直し、 

相談体制や方針整備をスタートさせるタイミングです。 

 

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👩‍💼 社労士として、現場実務と法令の間に立ち、 

派遣会社の皆さまが安心して対応できるようお手伝いします。 

制度対応はもちろん、「現場で機能する仕組みづくり」を一緒に進めていきましょう。 

 

当ホームページのお問合せ・相談フォームから、お気軽にお声がけください。

初回のご相談は無料です。

 

【関連記事】

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA027PU0S5A600C2000000/

 

【参考】

厚生労働省「令和7年の労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律(労働施策総合推進法)等の一部改正について」

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyoukintou/zaitaku/index_00003.html

厚労省が発表!ストレスチェック義務化の対象拡大で派遣会社が注意すべき3つの点   2025.10.06

## はじめに:ストレスチェック義務化がすべての企業へ

 

厚生労働省は、従業員のメンタルヘルス状態を調べる「ストレスチェック制度」を、 

**全ての企業に義務化する方針**を正式に打ち出しました。

 

これまでストレスチェックの実施が義務付けられていたのは「従業員50人以上」の企業のみ。 

一方、50人未満の事業所、いわゆる零細企業や個人事業主を中心とした小規模事業所については、 

努力義務にとどまっていました。

 

しかし、今回の制度改正によって状況は一変します。 

厚労省によれば、新たに義務化の対象となる事業所は**約364万カ所**、 

対象労働者は**およそ2,893万人**にものぼります。 

日本の企業の大半を占める中小・零細事業所が、新たに対応を迫られることになります。

 

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## 背景:なぜ今、義務化なのか?

 

ストレスチェック義務化の背景には、 

「職場におけるメンタル不調の急増」という深刻な課題があります。

 

厚労省によると、**精神障害による労災認定件数はこの10年間で約2倍に増加**。 

2023年度には883件にのぼり、過労やハラスメント、長時間労働による心理的負担が 

依然として多くの職場に存在していることが分かります。

 

また、2022年11月から2023年10月の間に「メンタル不調で退職や1か月以上の休業者が出た」 

と答えた事業所は**13.5%**に達し、年々増加傾向です。 

特に小規模事業所ほど、職場内の人間関係や仕事の偏りによるストレスが蓄積しやすく、 

それに対するケア体制が整っていないのが現状です。

 

この状況を受けて厚労省は、ストレスチェック制度を「努力義務」から「義務化」へと 

一段階引き上げる方針を決定。 

今後、**労働安全衛生法の改正案**として国会提出が検討されています。

 

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## 派遣業界にとっての意味:複雑な構造が浮き彫りに

 

この制度改正、派遣業界にとっては特に重要な意味を持ちます。 

なぜなら、派遣労働者は「派遣元」と「派遣先」という**二重の職場環境**の中で働いているからです。

 

通常、ストレスチェックの実施主体は「雇用主」である派遣元事業主。 

しかし、実際に日々の業務を行うのは派遣先企業であり、 

ストレスの多くは派遣先の環境や人間関係、労働条件から生じます。

 

このため、制度の運用にあたっては次のような課題が想定されます。

 

- 派遣元がどのように派遣先の職場環境に関する情報を把握するか 

- チェック結果をどの範囲で共有できるのか(個人情報・プライバシーの扱い) 

- ストレスチェック結果を踏まえた「職場改善」をどちらの責任で行うのか 

 

これらの点を明確にしないまま制度が動き出すと、 

派遣元・派遣先間でトラブルや責任の押し付け合いが生じる可能性もあります。 

 

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## 注意すべき3つのポイント

 

では、派遣会社が今回の義務化を前に、具体的に注意すべきポイントは何でしょうか。 

ここでは、社労士としての実務経験から「3つの観点」で整理します。

 

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### ① 実施体制の整備【キーワード:ストレスチェック 体制構築】

 

まず最初のポイントは、「誰が」「どのように」実施するのかという体制づくりです。

 

ストレスチェックは、医師・保健師・看護師・公認心理師など、 

専門職による実施が求められます。 

しかし零細規模の派遣会社では、社内に専門職を配置するのは難しいため、 

多くの場合は外部委託となります。

 

委託先を選ぶ際は以下を確認しましょう。

 

- 派遣労働者の就業形態に理解があるか(多様な職場に派遣されている点) 

- オンライン対応が可能か(拠点が分散している場合) 

- 結果の管理・保管が適切に行われるか(個人情報保護法への対応) 

 

さらに、実施後の「高ストレス者への医師面接指導」や「結果のフィードバック」まで含めた 

運用フローを社内で整備することが重要です。

 

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### ② 派遣先との協力体制【キーワード:派遣先 情報共有】

 

次に大切なのは、派遣先との連携です。

 

ストレスチェックは個人のプライバシーに関わる情報であるため、 

結果をそのまま派遣先に共有することはできません。 

しかし、派遣先の職場環境に起因するストレスが多い場合、 

派遣元だけでの改善は難しいのが現実です。

 

したがって、派遣契約書や労働者派遣契約に以下のような条項を追加・明確化しておくことが望まれます。

 

- 健康管理・安全衛生に関する協定書の締結 

- ストレスチェック実施に関する情報共有ルール 

- メンタル不調者発生時の対応フロー 

 

こうしたルールが明文化されていないと、 

「派遣先の環境が原因で体調を崩した場合、どちらが責任を負うのか?」という問題が 

曖昧になりがちです。

 

今後の法改正を見据え、契約段階で「健康管理に関する取り決め」を盛り込むことが、 

派遣元にとってのリスクヘッジになります。

 

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### ③ 結果を活かす“職場改善”への取り組み【キーワード:職場環境 改善】

 

ストレスチェックは「やったら終わり」ではありません。 

むしろ本質は、「チェック結果をどのように活かすか」にあります。

 

チェックの結果、特定の職場や部署で高ストレス者が多い場合、 

その背景には「業務量の偏り」や「コミュニケーション不足」など、 

構造的な問題が隠れていることが多いです。

 

派遣会社としては、以下のような取り組みを行うことが効果的です。

 

- 派遣スタッフ向けアンケートによる定期的な職場満足度調査 

- 派遣先担当者へのフィードバックと職場環境改善の提案 

- メンタルヘルス研修・カウンセリング窓口の設置 

 

これにより、派遣スタッフが安心して働ける職場環境を維持でき、 

結果的に定着率や派遣先からの信頼にもつながります。

 

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## 厚労省の支援と今後のスケジュール【キーワード:労働安全衛生法 改正】

 

厚労省は、零細事業所の対応を支援するため、 

ストレスチェックの運用マニュアルや事例集を作成する方針を示しています。 

特に「プライバシー保護の方法」や「結果の管理体制」については、 

今後明確なガイドラインが提示される見通しです。

 

労働政策審議会の安全衛生分科会で議論が進められ、 

**2025年度中にも労働安全衛生法改正案が国会提出される可能性**があります。 

つまり、実施は早ければ**2026年度以降**になる見込みですが、 

準備には時間がかかるため、今のうちから体制づくりを始めておくことが得策です。

 

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## 義務化をチャンスに変える「健康経営」の視点【キーワード:健康経営 派遣スタッフ】

 

ストレスチェックの義務化を「負担」と感じる企業も多いでしょう。 

しかし、視点を変えればこれは**企業の魅力を高めるチャンス**でもあります。

 

職場の心理的安全性を高めることは、 

派遣スタッフの定着率向上・ミスマッチの減少・生産性の向上に直結します。 

いわば「人を大切にする企業文化」の形成です。

 

また、ストレスチェックの結果を定期的に分析し、 

「派遣スタッフが働きやすい職場ランキング」などの指標を作ることで、 

採用力の向上にもつながります。

 

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## 社会保険労務士がサポートできること【キーワード:社労士 ストレスチェック 支援】

 

社会保険労務士としては、以下のような支援が可能です。

 

- ストレスチェック制度の設計・運用支援 

- 派遣元・派遣先の役割分担に関する協定書の作成 

- 結果を活用した職場改善施策の提案 

- 高ストレス者対応や復職支援に関する助言 

 

特に中小・零細の派遣会社では、限られた人員で制度運用を行うため、 

「外部の専門家との連携」が実効性を高めるカギになります。

 

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## まとめ:ストレスチェックを「義務」ではなく「投資」に

 

今回の義務化拡大は、 

単なる法令遵守の話ではなく、企業の持続可能性に関わるテーマです。

 

人が定着し、安心して働ける環境を整えることは、 

これからの時代の“企業競争力”そのもの。

 

派遣会社としては、 

「法対応をいち早く整える企業」ではなく、 

「制度を上手に活かして人を守る企業」になることが求められています。

 

ストレスチェックを「やらされる義務」ではなく、 

「人と組織を成長させる投資」として捉える。 

その一歩を、今から踏み出すことが大切です。

 

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📘 **まとめポイント**

 

- 厚労省がストレスチェックの義務化対象を全企業に拡大 

- 派遣会社は「体制整備」「派遣先との協定」「職場改善」が3大テーマ 

- 義務化は2026年頃の見込み。今から準備を進めることが重要 

- ストレスチェックは“健康経営”への第一歩 

- 社労士による制度設計・運用支援を活用し、安心して対応を 

 

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社会保険労務士として、派遣会社の皆さまが安心して制度対応を進められるよう、 

実務に即したサポートを行っています。 

 

お困りの際は、当ホームページのお問合せ・相談フォームから、お気軽にお声がけください。

初回のご相談は無料です。

 

 

※参照記事)

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA1132D0R11C24A0000000/

 

※参照リンク)厚生労働省「ストレスチェック等の職場におけるメンタルヘルス対策・過重労働対策等」

https://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/anzeneisei12/index.html

 

教育訓練休暇給付金とは?派遣会社が知っておくべき制度のポイントと活用法   2025.10.03

### はじめに 

2025年10月1日、新たにスタートした「教育訓練休暇給付金」。 

これは労働者が会社を辞めずに無給の休暇を取り、その間に学習や訓練に専念できるよう支援する制度です。休暇中には雇用保険から賃金の一定割合が支給され、生活費の不安を抱えずにリスキリング(学び直し)に挑戦できるという画期的な仕組みです。 

 

特に派遣会社にとって、この制度は「社員のキャリア支援」「人材定着」「派遣先からの信頼獲得」に直結する重要な制度となり得ます。今回は、派遣会社の経営者・人事担当者に向けて、教育訓練休暇給付金の内容やメリット、実務上の注意点を解説していきます。 

 

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### 1. 教育訓練休暇給付金とは? 

教育訓練休暇給付金は、雇用保険の給付制度の一つです。労働者が自発的に教育や訓練のための休暇を取得する場合、無給であってもその期間の生活を保障するために、失業給付に準じた額が支給されます。 

 

つまり、仕事を辞めなくても「一時的に仕事を離れて学ぶ」ことができるという点が特徴です。従来は「退職してから学び直す」選択肢が中心でしたが、制度によって「在職しながらキャリアを積み直す」ことが現実的になりました。 

 

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### 2. 制度が始まった背景とリスキリングの重要性 

AIやDXの進展により、労働市場は急速に変化しています。これまで必要とされたスキルが数年で不要になる一方、新しいスキルへの需要は高まり続けています。 

 

こうした状況の中で注目されるのが「リスキリング(Reskilling)」です。新しい職務や業務に対応するために、既存の人材が再び学び直すことが企業競争力の鍵になっています。 

 

教育訓練休暇給付金は、こうした社会背景に対応する形で創設されました。労働者が安心してキャリア形成に取り組めるよう支援することで、結果的に企業全体の成長にもつなげる狙いがあります。 

 

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### 3. 対象となる労働者の条件 

給付金を受けるためには、以下の条件を満たす必要があります。 

 

1. **雇用保険の一般被保険者であること** 

   (65歳以上の高年齢被保険者や短期雇用特例被保険者は対象外) 

 

2. **休暇開始前の2年間に12か月以上の被保険者期間があること** 

   ※月に11日以上勤務している必要があります。 

 

3. **雇用保険の加入期間が通算5年以上あること** 

 

4. **本人が自発的に教育訓練休暇を取得していること** 

   (業務命令ではなく、自分の希望での休暇であることが必須) 

 

派遣社員も、派遣元の雇用契約を通じて雇用保険に加入していれば対象となり得ます。 

 

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### 4. 支給額と給付日数の具体例 

給付額は、失業給付と同じ計算方法で算定されます。 

 

- 月収35万円の労働者 → 約19.5万円/月が支給 

- 給付日数は加入期間によって変動 

  - 5年以上10年未満:90日 

  - 10年以上20年未満:120日 

  - 20年以上:150日 

 

例えば、10年以上勤務している社員が4か月の語学留学に行く場合、最大で約78万円が支給される計算です。 

 

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### 5. 利用できる教育訓練の種類 

対象となる教育訓練は非常に幅広く設定されています。 

 

- 学校教育法に基づく大学・大学院・短大・高専・専修学校など 

- 教育訓練給付金の指定講座(資格取得講座など) 

- 職業安定局長が定める専門的な教育訓練(司法修習、語学留学、海外大学院での修士号取得など) 

 

派遣社員の場合も「資格取得」や「語学研修」といったニーズが多く、現実的に利用しやすい制度と言えます。 

 

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### 6. 手続きの流れと企業側の準備 

制度を利用するには、企業側の準備も欠かせません。 

 

1. **就業規則に教育訓練休暇の規定を整備** 

   → この規定がなければ申請できません。 

 

2. **労働者が「教育訓練休暇取得確認票」を提出** 

   → 事業主が同意した上で進める必要があります。 

 

3. **事業主がハローワークへ書類提出** 

   → 賃金月額証明書などを10日以内に提出。 

 

4. **労働者が申請書類を提出** 

   → ハローワークで審査を受け、受給資格が決定されます。 

 

派遣会社の場合、派遣先との業務調整や代替要員の手配など、現場の調整力も問われます。 

 

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### 7. 派遣会社にとってのメリットと注意点 

教育訓練休暇給付金は、派遣会社にとって大きなメリットがあります。 

 

- 社員のキャリアアップを支援できる 

- 定着率が上がり、人材流出を防げる 

- 「学びを応援する会社」というブランド強化につながる 

 

一方で注意すべき点もあります。 

- 派遣先企業との調整負担 

- 業務の一時的な人員不足 

- 制度利用に伴う就業規則や申請の煩雑さ 

 

このあたりを事前に整備しておくことで、制度活用がスムーズになります。 

 

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### 8. 派遣社員は対象になる?実務での判断ポイント 

派遣社員の場合、雇用契約は派遣元と結んでいるため、給付金の申請も派遣元が対応します。 

 

- **雇用保険に加入していること** 

- **派遣元に教育訓練休暇の規定が整備されていること** 

 

これらが満たされていれば、派遣社員も対象です。 

ただし派遣先との関係調整は不可欠であり、派遣元として「教育訓練休暇取得を認めるかどうか」の判断は重要になります。 

 

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### 9. 不正受給への注意とコンプライアンス体制 

制度利用において最も注意が必要なのが「不正受給」です。 

 

- 実際には教育訓練を受けていないのに申請 

- 書類を偽造して給付を受ける 

- ハローワークへの虚偽報告 

 

こうした行為は、給付金の返還だけでなく「返還額の2倍の追徴」「詐欺罪に問われる可能性」まであります。派遣会社としては、制度を適正に利用するためのコンプライアンス体制を整えておくことが不可欠です。 

 

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### 10. まとめ:社員の学びを応援することが企業の成長につながる 

教育訓練休暇給付金は、単なる給付制度ではなく「人材投資を支える仕組み」です。 

 

派遣会社にとって、社員のリスキリングを応援することは、結果的に企業の競争力を高めることにつながります。 

 

- 社員にとっては安心して学べる環境 

- 企業にとってはスキルアップと人材定着の促進 

- 派遣先にとっては質の高い人材の供給 

 

三者にとってプラスの循環を生み出す可能性を秘めています。 

 

制度は始まったばかり。派遣会社としていち早く理解し、準備を整えることで「社員の未来」と「会社の成長」を同時に支援できるのではないでしょうか。 

 

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※制度の詳細や適用可否は個別の状況によって異なります。導入を検討される場合は、専門家である社会保険労務士にご相談ください。

 

お困りの際は、当ホームページのお問合せ・相談フォームから、お気軽にお声がけください。

初回のご相談は無料です。

 

 

※参照記事)yahooニュース

https://news.yahoo.co.jp/articles/fa4866fb67ca873507a8f59dbb772b34f3183751

 

※参照)厚生労働省「教育訓練休暇給付金」

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/koyouhoken/kyukakyufukin.html

 

派遣会社が活用すべき確定拠出年金制度改正のポイントとは?   2025.09.24

### 1. はじめに:派遣会社にとって確定拠出年金制度の改正は「チャンス」

 

2024年に予定されている確定拠出年金法等の改正では、企業型DC(企業型確定拠出年金)やiDeCo(個人型確定拠出年金)に大きな見直しが入りました。 

「老後の資産形成」を後押しするための制度改正ですが、派遣会社にとっては単なる年金制度の話ではありません。 

 

なぜなら、この改正は **「人材の確保」「スタッフの定着」「企業のブランディング」** に直結するからです。 

人材不足が深刻化する中で、福利厚生の強化は他社との差別化ポイントになります。特に派遣業界は短期的な雇用関係が多いため、福利厚生が整っているかどうかは応募者に大きな影響を与えます。 

 

今回は、派遣会社が知っておくべき改正内容と、その実務的な活用方法を解説します。 

 

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### 2. 今回の確定拠出年金制度改正のポイント整理

 

まずは改正内容を簡単に押さえておきましょう。 

 

- **企業型DC(会社が導入する年金制度)** 

  拠出限度額が「月額5.5万円 → 6.2万円」へ引き上げ。 

 

- **iDeCo(会社員の個人型年金)** 

  拠出限度額が「月額2.0万円/2.3万円 → 6.2万円」へ大幅引き上げ。 

 

- **自営業者(第1号被保険者)** 

  拠出限度額が「月額6.8万円 → 7.5万円」へ引き上げ。 

 

- **iDeCo加入年齢** 

  60歳未満から最大70歳未満まで拡大。シニア層も加入可能に。 

 

- **マッチング拠出の要件緩和** 

  「従業員の掛金が会社の掛金を超えてはいけない」という制限が撤廃され、柔軟な掛金設定が可能に。 

 

これらの改正により、従業員一人ひとりのライフプランに合わせた資産形成が可能となり、企業もより柔軟な福利厚生設計ができるようになります。 

 

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### 3. 派遣会社が注目すべき理由

 

派遣スタッフは正社員に比べ、福利厚生が手薄と感じられがちです。 

その結果、短期的な就業にとどまり、長期的な定着にはつながりにくいのが現実です。 

 

しかし、確定拠出年金制度を活用すれば、派遣会社も「長期的に安心して働ける環境」を整備できます。 

具体的には―― 

 

- 「派遣会社でも老後資産を積み立てられる」という安心感を与える。 

- 福利厚生が手厚い=他社との差別化になる。 

- 年齢が高いスタッフにも魅力的な制度を用意できる。 

 

つまり、**採用力と定着率を同時に高める武器** となるのです。 

 

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### 4. 企業型DC導入で広がる可能性

 

企業型DCを導入することで、派遣スタッフに「会社が将来の生活をサポートしてくれている」という印象を与えられます。 

特に、近年は求職者が求人票で「福利厚生」を重視する傾向が強まっています。給与水準が同程度なら、福利厚生が整っている会社を選ぶのは自然な流れです。 

 

例えば―― 

- 「派遣会社でも企業型DCを利用できる」ことを求人票に記載すれば、応募者の目を引きやすい。 

- 導入企業としてPRすることで、採用面でのブランド力がアップする。 

- 派遣スタッフの「長期的な関わり」を促すことができる。 

 

一見、年金制度はスタッフ個人の話に見えますが、導入することで **会社の魅力を高める経営戦略** に変わります。 

 

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### 5. iDeCo加入年齢拡大が意味するもの

 

今回の改正で特に注目されるのが、iDeCoの加入可能年齢が70歳未満まで拡大されたことです。 

 

派遣業界では、定年後も働き続ける60代後半のスタッフが増えています。彼らにとって「まだ資産形成できる仕組みがある」というのは大きなメリットです。 

 

派遣会社としては、 

- シニア層を積極的に活用する戦略を取りやすくなる。 

- 長期的な勤務を希望する高齢スタッフに魅力的な環境を用意できる。 

- 「年齢に関係なく安心して働ける会社」という評価につながる。 

 

つまり、今回の改正は「若い人材」だけでなく「シニア人材確保」にもプラスに働きます。 

 

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### 6. マッチング拠出の制限撤廃と派遣会社の活用法

 

従来は、従業員の掛金が会社の掛金を超えることができませんでした。 

しかし、今回の改正でこの制限が撤廃されました。 

 

これにより―― 

- 会社は最低限の負担で制度を導入できる。 

- スタッフは自分の意志で積極的に掛金を拠出できる。 

- 双方にとって柔軟で負担の少ない制度設計が可能。 

 

派遣会社はコストを抑えつつ、スタッフには「福利厚生が整っている」というアピールができるため、非常に実務的なメリットがあります。 

 

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### 7. 定着率向上につながる仕組みづくり

 

福利厚生の充実は、そのままスタッフの定着率につながります。 

特に派遣業界は「数カ月で辞めてしまう」という課題を抱えやすい業種です。 

 

そこで企業型DCやiDeCoを活用すれば、 

- 「長期的に働くとメリットが大きい」と感じてもらえる。 

- 会社に愛着を持ちやすくなる。 

- 無形の安心感が離職防止に直結する。 

 

結果として、採用コスト削減や人材の安定供給にも貢献します。 

 

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### 8. 人材確保競争での差別化

 

人材不足が深刻化する中、派遣会社同士の競争は激化しています。 

その中で「福利厚生の手厚さ」は、応募者が会社を選ぶ大きな判断材料です。 

 

確定拠出年金制度を導入している派遣会社は、 

- 「スタッフを大切にしている会社」というイメージを獲得。 

- 求人広告や説明会でアピールできるポイントが増える。 

- 中長期的には「応募が集まりやすい会社」へと変わる。 

 

福利厚生は単なる「コスト」ではなく、**採用マーケティングの武器** になるのです。 

 

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### 9. 社会保険労務士からの実務アドバイス

 

実際に制度を導入する際には、いくつかの注意点があります。 

例えば、 

- 拠出限度額の設定は適切か? 

- 派遣スタッフの雇用形態に合った制度設計になっているか? 

- 税制上の取り扱いを正しく理解しているか? 

 

これらを誤ると、せっかくの制度が逆に負担になってしまうこともあります。 

導入の可否や制度設計については、必ず専門家に相談しながら進めることをおすすめします。 

 

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### 10. まとめ:制度改正を人材戦略に活かす時代へ

 

今回の確定拠出年金制度の改正は、「老後の安心」を提供するだけではなく、派遣会社にとって **人材戦略の追い風** となります。 

 

- 採用力アップ 

- 定着率の向上 

- シニア層の活用 

- 他社との差別化 

 

これらを同時に実現できる可能性を秘めています。 

 

「うちの会社にも導入できるのか?」 

まずはここからスタートすれば十分です。 

 

派遣業界は今、人材確保の大きな転換期を迎えています。 

制度改正を単なるニュースとして終わらせず、経営に活かす一歩を踏み出すことが、これからの成長につながるでしょう。 

 

お困りの際は、当ホームページのお問合せ・相談フォームから、お気軽にお声がけください。

初回のご相談は無料です。

 

※リンク)厚生労働省「令和7年度税制改正に関する参考資料」

https://www.mhlw.go.jp/content/10600000/001365075.pdf

派遣会社が対応必須!10月施行「育児・介護休業法改正」のポイントと実務対応   2025.09.19

2024年10月1日から、改正育児・介護休業法の新しいルールが施行されました。 

今回の改正で特に重要なのは、**「育児期における柔軟な働き方制度の義務化」**と**「個別の意向聴取・配慮の義務化」**です。 

 

この制度はすべての企業が対象となっており、当然ながら派遣会社や派遣スタッフも例外ではありません。 

むしろ、派遣という働き方の特性上、派遣会社には特別な配慮と準備が求められる場面が多くなります。 

 

本記事では、改正の背景から新たな義務の具体的内容、そして派遣会社が直面する課題と実務対応までを詳しく解説していきます。 

 

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## 1. 改正の背景:なぜ育児・介護休業法が見直されたのか 

 

少子化が深刻化する一方で、共働き世帯の割合は増加の一途をたどっています。 

厚生労働省の調査によれば、共働き世帯は専業主婦世帯の2倍以上。特に子育て世代では「働きながら子育てする」ことが当たり前になっています。 

 

しかし現実には、育児と仕事の両立は依然として難しく、多くの労働者が離職やキャリア中断を余儀なくされています。 

企業にとっても優秀な人材の流出は大きな損失です。 

 

こうした背景から、「仕事と育児を両立しやすい環境をつくる」ことが社会的に急務となり、今回の法改正につながりました。 

 

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## 2. 10月から義務化される「柔軟な働き方措置」とは 

 

今回の改正では、**3歳から小学校就学前までの子を育てる労働者**に対して、以下5つの制度のうち「2つ以上」を整備することが企業に義務付けられました。 

 

1. **始業・終業時刻の変更(時差出勤など)** 

   所定労働時間を変えずに、始業や終業を前後にずらす制度。フレックスタイム制も含まれます。 

 

2. **テレワーク(月10日以上)** 

   在宅勤務やリモートワークを、1日の労働時間を維持したまま月10日以上利用できる制度。 

 

3. **保育施設やベビーシッターの提供** 

   自社で保育施設を設置するか、外部のベビーシッター費用を負担するなど、子育て支援の便宜を供与。 

 

4. **養育両立支援休暇(年10日以上)** 

   年に10日以上取得できる特別休暇。病気や行事対応など柔軟に活用できます。 

 

5. **短時間勤務制度** 

   所定労働時間を1日6時間とする制度など、勤務時間を短縮する仕組み。 

 

この中から事業主は2つ以上を整備し、労働者は1つを選んで利用できます。 

つまり、企業は「選択肢を用意すること」が必須であり、労働者は「遠慮せずに権利として利用できる」時代に変わったのです。 

 

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## 3. 3歳未満の子を持つ労働者への「個別周知・意向確認」義務 

 

さらに重要なのが、**3歳未満の子を育てる労働者**への対応です。 

 

企業は、育児制度や時間外労働の制限などについて「個別に周知」し、労働者本人の「利用意向を確認」することが義務付けられました。 

 

ポイントは次の通りです。 

- 周知方法は面談・書面・FAX・メールでも可能。 

- 「利用を控えた方がいい」といった誘導は違法行為。 

- 育児休業からの復帰時や制度利用中に面談を行うことが望ましい。 

 

つまり、企業が「聞かれるまで待つ」のではなく、積極的に制度を提示し、利用をサポートする姿勢が求められるのです。 

 

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## 4. 派遣会社特有の課題:派遣元と派遣先の役割分担 

 

派遣スタッフの場合、労働契約を結ぶのは派遣元ですが、実際に勤務するのは派遣先です。 

この二重構造により、次のような課題が生じます。 

 

- 制度整備は派遣元で行うべきか、派遣先と連携すべきか。 

- スタッフへの意向確認は誰が行い、どのタイミングで記録するのか。 

- 派遣先に制度がない場合、どう補うのか。 

 

派遣元が制度を持たないままでは法令違反になる可能性が高く、また派遣先とのトラブルにもつながります。 

したがって、**派遣元が主体的に制度を整え、派遣先と調整を図る**ことが重要です。 

 

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## 5. スタッフへの説明と相談体制の整備 

 

法改正を形だけで済ませてしまうと、スタッフは制度を使いにくく、結局は離職につながります。 

派遣会社としては次のような取り組みが求められます。 

 

- **制度案内の分かりやすい資料作成** 

- **相談窓口の明確化**(メール・電話・オンライン面談など) 

- **スタッフが申出しやすい雰囲気づくり** 

 

特に派遣スタッフは、派遣先に気を使って「制度を申請しづらい」状況になりがちです。 

派遣元が積極的にサポートしなければ、せっかくの制度が絵に描いた餅になってしまいます。 

 

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## 6. 厚労省が推奨する「定期的な意向聴取」の活用 

 

厚生労働省は「制度利用中や復職時などに定期的な面談を行うことが望ましい」としています。 

 

これは単なる義務以上に、派遣会社にとっては大きなメリットがあります。 

- スタッフの状況を把握できる 

- 離職リスクを早期に察知できる 

- 信頼関係を築ける 

 

つまり「制度対応」以上に、「人材定着の仕組み」として活用できるのです。 

 

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## 7. 人材定着・採用へのプラス効果 

 

育児支援制度をしっかり運用している派遣会社は、求職者にとって魅力的に映ります。 

 

- 「安心して長く働ける会社」というブランド価値 

- 育児世代を含む幅広い人材の採用力向上 

- 他社との差別化 

 

制度対応はコストではなく、**人材確保の投資**と考えることが重要です。 

 

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## 8. 対応を後回しにするリスク 

 

一方で、対応を怠ると次のようなリスクが発生します。 

 

- 行政からの指導や勧告 

- スタッフや派遣先からの苦情・トラブル 

- 優秀な人材の離職 

 

特に派遣業界では「安心して働ける環境があるかどうか」が定着率に直結します。 

法対応を軽視することは、事業そのものの信頼を揺るがしかねません。 

 

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## 9. 実務対応のステップ 

 

派遣会社としては、次のステップで対応を進めることが現実的です。 

 

1. 社内規程・就業規則の改定 

2. 育児支援制度の整備(2つ以上選択) 

3. スタッフへの周知方法の設計 

4. 意向聴取フローの構築(記録・保存含む) 

5. 派遣先企業への情報共有と協力体制の構築 

6. 定期的なモニタリング・改善 

 

この一連の流れを「プロジェクト」として管理することで、対応漏れを防げます。 

 

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## 10. まとめ:義務をチャンスに変える経営判断を 

 

今回の法改正は、派遣会社にとって「新しい義務」ではありますが、同時に「信頼を得るチャンス」でもあります。 

 

制度を整え、スタッフに安心して働いてもらえる環境を提供すること。 

それは単なる法令順守を超えて、**人材定着と採用力の向上につながる経営戦略**です。 

 

「どの制度を選ぶべきか分からない」「派遣先との調整が難しい」など、現場ではさまざまな課題が出てくるでしょう。 

そうした時は、専門家である社会保険労務士にご相談いただければ、派遣業界の特性に合わせた実務的な対応をサポートできます。 

 

義務を負担と捉えるのではなく、チャンスと捉える。 

この発想の転換こそが、これからの派遣会社経営における最大のポイントになるはずです。 

 

当ホームページのお問合せ・相談フォームから、お気軽にお声がけください。

初回のご相談は無料です。

 

※記事リンク)

https://news.yahoo.co.jp/articles/77b2167d90468ddf080274170d24747608a7db5a

 

※参照リンク)厚生労働省「育児・介護休業法について」

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000130583.html

 

貿易実務者の労働時間削減に関するご提案   2024.03.26

経営者の皆さま

 

労働時間の上限規制(原則として月45時間・年360時間)が

来月4月1日より全ての業界において適用となりますが、

既にご対応されていますか?

 

参照)「時間外労働の上限規制について」厚生労働省

https://hatarakikatakaikaku.mhlw.go.jp/overtime.html

 

貴社の貿易実務者、SCM部、ITシステム部の方は下記のようなお悩みをお持ちではないでしょうか?

 

・海外との時差があり、時間外労働が多い(月45時間超)

・業務の属人化解消

・貿易DXを何から始めればよいか

・他社DXの事例(取り組まれている内容含む)を知りたい

・残業時間を減らして、人件費を削減したい

 

この度は、これらを解消するためのに有効な手段がありますので、ご案内しました。

 

私どものパートナー企業のサービスですが、この手段を用いますと、

情報の一元管理により無駄が省けますし、トラブル発生時も素早くリカバリーできる

というメリットがあります。

 

また、このツールを導入する際にIT導入補助金をご検討いただけます。

 

もしご興味のある方は、ホームページのお問合せ、もしくは

下記までご連絡いただけますと幸いです。

担当:泉 佳男

E-MAILy-izumi4864@mmjinji.jp

携帯電話)090-9009-6136

 

#残業規制 #時間外労働 #海外貿易 #働き方改革 #DX

2024年の人事労務関係の主な法改正。早めの対応が吉!   2023.12.26

2023年は、コロナ禍後のオンライン&リアル勤務や育休推進などを経て、仕事や生活の捉え方の大きな変化を目の当たりにした1年でした。


2024年はより細やかにその変化に対応する法令が、春先から試行されていく1年と言えそうです。


注目したい3大改正について取り上げます。




①労働条件の明示が、より詳しくより細やかに必要に

(改正労働基準法:2024年4月1日施行)


労働条件の明示は今や常識になってきていますが、今回の改正はさらに入社後のトラブルを減らすための事項が4項目追加されています。煩雑にはなりますが、労働者との良い関係を構築・維持していくために対応をしていきたいですね。



(1)就業場所・業務の「変更の範囲」の明示


今までは入社時・最初の労働契約締結時に就業場所や業務内容・範囲を説明すれば良しとされていました。


今後は、すべての労働契約の締結と有期労働契約の更新のタイミングごとに、その変更の範囲、つまり将来の異動による就業場所・業務範囲を示すことが求められます。


これによって、入社後に言われていた仕事でないところに異動になった、というトラブルの未然防止にもありますし、労働者にとっても安心してキャリア形成やワーク・ライフ・バランスを図りやすくなる狙いがあります。



(2)更新上限(通算契約期間または更新回数の上限)の有無と内容


有期労働契約の締結と契約更新のタイミングごとに、更新上限(通算契約期間または更新回数の上限)の有無と内容の明示が必要になります。またそれを変更する(新設・短縮など)場合、理由も合わせた説明も求められることになりました。


有期労働契約の更新が何回できるのか、いつまで契約を続けられるか上限を設けることは、違法ではありません。ただ、その回数・期間が不明確であったり、急に変更されることは労働者にとっては大きな不安・不信につながることでもありました。



(3)無期転換申込機会の明示


「無期転換申込権」が発生する更新のタイミングごとに、無期転換を申し込むことができる旨(無期転換申込機会)を明示することが義務付けられます。


実は、無期転換ルールの認知度が低いために、自分に無期転換申込権が発生してもそれを行使しない労働者の割合が高いことが、厚生労働省の調査でも指摘されています。



(4)無期転換後の労働条件の明示


上記に加えて、使用者はその「無期転換申込権」が発生する更新のタイミングごとに、無期転換後の労働条件も明示することが必要になります。


具体的には「業務の内容、責任の程度、異動の有無・範囲などで、これも、労働者が無期転換するかどうかを判断しやすくする配慮となっています。




②障害者の法定雇用率が引き上げに。障害のある人への合理的配慮の提供も義務化

(障害者の雇用の促進等に関する法律施行規則等:2024年4月1日施行)


障害者の法定雇用率は現在2.3%ですが、2024年4月より2.5%、2026年7月より2.7%へと段階的に引き上げられます。


また、障害者差別解消法も改正され、事業者も障害のある人への合理的配慮の提供が義務化されます。合理的配慮の提供とは、障害者から「社会的なバリアを取り除いてほしい」という声があった場合、それを実施する上での負担が可能であれば、必要かつ合理的な配慮をするということです。(詳細は、下部の参考リンクを参照ください)




③社会保険の適用拡大。より小さい企業・短時間労働者も対象に

(改正厚生年金保険法:2024年10月1日施行)


2020年に成立した「年金制度改正法」により、短時間労働者が社会保険の加入対象となる企業規模が段階的に引き下がっていますが、2024年10月からは従業員数が51~100人の中小企業も社会保険の適用範囲拡大の対象になります。


また、それに加えて「短時間労働者」の要件も変わります。10月からは以下の条件を満たす人が対象になります。


・所定労働時間が週20時間以上

・雇用期間が2ヶ月以上の見込み(←以前は1年以上)

・賃金の月額が88000円以上

・学生でない


対象が拡大することもあり、社会保険に入るかどうかで勤務形態の変更を選択する労働者も出てくることが考えられます。今回該当になる企業の方は早めの対応をおすすめします。


このほかにも


・専門業務型裁量労働制の適用対象業務が拡大。導入・継続要件追加(4月1日施行)

・建設業・自動車運転業・医師にも時間外労働の上限規制(4月1日施行)

・マイナンバーカードと健康保険証の一体化(秋頃)


などが行われます。




みなとみらい人事コンサルティングでは、人事・労務に関わる最新情報を元に、貴社の状況に合わせたご相談に応じています。法令改正への対応についてのご相談もたまわります。お問合せ・相談フォームから、お気軽にお声がけください。初回の相談は無料です。



ご参考:


■厚生労働省/令和4年度労働政策審議会労働条件分科会報告を踏まえた労働契約法制の見直しについて(無期転換ルール及び労働契約関係の明確化)https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_32105.html


■厚生労働省/障害者の法定雇用率引上げと支援策の強化についてhttps://www.mhlw.go.jp/content/001064502.pdf


◼️内閣府/令和6年4月1日から合理的配慮の提供が義務化されます!

https://www8.cao.go.jp/shougai/suishin/sabekai_leaflet-r05.html


■厚生労働省/年金制度改正法(令和2年法律第40号)が成立しました

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000147284_00006.html




(文責:コラム担当/金田千和)


 

求められるLGBTQ+従業員支援の取り組み。その意外な効果とは?   2023.07.28

法案の提出から7年を経て、2023年6月に「LGBT理解増進法」が成立しました。内容については様々な議論は続いていますが、まずはそういった議論が広く行われるようになったことは大きな転機と言えるかもしれません。

 

このような中、企業では性的マイノリティ(LGBTQ+)当事者を支援するために、今現在はどのような対応を行っているのでしょうか。

 

調査からわかった、その取り組みの実情と現れている効果についてお伝えします。




◾️性的マイノリティ当事者は5.3%。周囲は助けてくれるが、会社の取り組みはまだ。

 

アデコ株式会社は、正社員として働く20代から50代の会社員2,000人(各年代男女250人ずつ)を対象にインターネットで、LGBTQ+(性的マイノリティ)とジェンダー・ギャップに関する意識調査を行いました。

 

それによると、「自身を性的マイノリティであると考えている」と回答したのは全体の5.3%。つまり少なくとも20人に1人は性的マイノリティ当事者であることがわかりました。

 

そのうち、カミングアウト(公言)している人は26.7%とまだ少数。

ただ、職場において「性自認や性的志向に関する悩みについて相談できる相手がいる」と回答した人は59.1%にのぼりました。

 

自分が当事者であることは公言はしていないものの、周囲で悩みを相談できる相手がいる人も半数以上ということがわかります。

 

しかし、会社として取り組みが実施されているかどうかというと、自分の務める職場で性的マイノリティのための制度導入や理解促進のための取り組みが実施されているところはわずか18.5%にとどまりました。

 

 

◾️「LGBTQ+従業員を支援する取り組み」は大企業で約4割、中小企業で2割以下

では、実際企業としての取り組みはどれくらい進んでいるのでしょうか。

Indeed Japan株式会社は「LGBTQ+当事者の従業員への取り組みに関する調査」を行っています。回答を得たのは、全国の20~50代までの会社・団体の経営者・役員、会社員 62,325名(うち人事に携わる人500名)でした。

 

それによると、LGBTQ+の人に対する取り組みを行っているのは、大企業(1,000名以上)では39%、中小企業(2~999名)は18%にとどまっていました。

 

具体的な施策としては「面接や応募者とのやりとりにおいて、LGBTQ+当事者への差別的な発言をしないようにしている」が40.8%、「企業サイトにLGBTQ+当事者の従業員への取り組みの有無を掲載している」は23.0%、「求人票にLGBTQ+当事者の従業員に関する制度や福利厚生の内容を記載している」は20.4%でした。

 

企業としては、様々な立場の社員への施策対応を迫られている中で、まずは「女性」(63.6%)や「子どもをもつ人」(60.4%)「障がいのある人」(49.9%)そして「外国籍の人」(40.4%)に対して優先順位は向けられているようです。

 

その中で、今現在「LGBTQ+」に対する取り組み実施は24.2%と、最下位。法案が成立し、今後LGBTQ+当事者の従業員への施策への取り組みが充実していって欲しいものです。

 

 

 

◾取り組みは、当事者以外も働きやすい企業文化につながる効果も


取り組みを実施している企業では、その効果は現れやすく、「SOGI(性自認・性的指向)ハラスメントが減少した」(27.4%)との回答が多く、結果「LGBTQ+当事者の従業員平均勤続年数が長い/伸びている」というところが7割に達しています。

 

また、施策を導入していない企業との比較でいうと「ダイバーシティ(多様性)が担保されている」が約2倍、次いで、「お互いを認め合う/尊重し合う風土がある」が約1.6倍となっています。

 

LGBTQ+当事者の従業員に対する取り組みを行う企業では、ダイバーシティのある企業文化が醸成され、結果、当事者のみならず誰もが働きやすい環境づくりにつながっていると言えそうです。

 

従業員の職場環境に対する満足度が上がることで、採用や人材活用の面での効果も期待できます。

 

「LGBT理解増進法」は、今現在は罰則を伴わない理念法のため、後回しになりがちではあります。ただ、その趣旨を理解して社内環境を整えていくことで、採用や人材活用面でのメリットは大きいと考えられます。

 

みなとみらい人事コンサルティングでは、人事・労務に関わる最新情報を元に、貴社の状況に合わせたご相談に応じています。

また、法令に則した具体的な社内での施策、従業員への対応について、アドバイスが可能です。

お問合せ・相談フォームから、お気軽にお声がけください。初回の相談は無料です。



ご参考:

■アデコ株式会社『LGBTQ+(性的マイノリティ)とジェンダー・ギャップに関する意識調査』

(2023年6月)

https://www.adeccogroup.jp/pressroom/2023/0628



■Indeed Japan株式会社『LGBTQ+当事者の従業員への取り組みに関する調査』

(2023年6月)

https://jp.indeed.com/press/releases/20230622-2(プレスリリース)

https://d341ezm4iqaae0.cloudfront.net/press/sites/2/2023/06/21185051/%E3%80%90%E3%83%97%E3%83%AC%E3%82%B9%E3%83%AA%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%82%B9%E3%80%91%E4%BC%81%E6%A5%AD%E3%81%AELGBTQ%E5%BD%93%E4%BA%8B%E8%80%85%E3%81%AE%E5%BE%93%E6%A5%AD%E5%93%A1%E3%81%B8%E3%81%AE%E5%8F%96%E3%82%8A%E7%B5%84%E3%81%BF%E3%81%AB%E9%96%A2%E3%81%99%E3%82%8B%E8%AA%BF%E6%9F%BB.pdf(調査資料詳細)




(文責:コラム担当/金田千和)




 


 

 

 


インフレ・円高……我が社は賃金アップをする?しない? 調査データにみる企業の葛藤   2023.03.01

2023年4月から労基法によって中小企業に対しても時間外労働に対する割増賃金率の引き上げが求められることになっています(*詳細は下記ご参考資料)。

その一方で賃上げによって、従業員のインフレによる経済的負担を軽減しようという動きも出てきています。昨年12月の消費者物価は4%増。40年ぶりの上昇率となったことから、働く人の賃上げの要望・期待の声が上がるのは無理からぬことでしょう。

それに対して企業はどのような対応状況・意向なのか、調査データからみていきます。

 

 

◾️「割増賃金率引き上げ」しなくては…しかし対応が遅れる中小企業

 

目の前に迫った、法令施行。エン・ジャパンが昨年末中小企業対象に行った調査によると、この「割増賃金率引き上げ」について、8割の中小企業が「知っている」(内容も含めて:36%、概要だけ:44%)と回答しました。

 

そして、65%の企業が「従業員への正当な報酬として当然」「長時間労働をさせないという企業にとっての抑止効果になる」などの理由から肯定的に捉えていることもわかりました。

 

ただ、割増賃金率の引き上げに対応にあたって「経営に支障が出る」と考える中小企業は4割。そのためか、なかなか取り組みは進んでいないのが現状のようです。

 

調査が行われたのは2022年12月でしたが、その時点で「既に必要な対応を完了した」と回答した企業はわずか11%、「対応方法が決まっている」(取り組んでいる、取り組む予定)も29%という結果でした。



◾️「人材が最も重要な投資分野」の一方、

6割の中小企業は物価の上昇にともなう賃金反映「対応予定なし」

 

日本生産性本部の調査では、「従業員への投資が重要」と答える企業が9割を超え、これは「IT」「研究開発」の2倍のポイントとなっています。企業規模にかかわらず、企業が人材が最重要と考えていることがはっきりとわかる結果と言えます。

 

 そして、最近の消費者物価の上昇を正社員の給料に反映するかどうかについて、ベースアップや一時金支給など「何らかのかたちで対応する」と答えた企業が6 割近くを占めました。

 

 ただし、回答した企業のうち、従業員数 300 人未満の中小企業に限ってみてみると「対応する予定はない」が 55.7%となっています。

その理由は「いったん賃金を上げると下げられない」「生産性が高まっていない」など挙げられており、ここでも難しい経営に直面する企業の姿が伺えます。



 

◾️「給与が高い企業へ」就活学生や派遣社員にみる動き

 

ただ、働く側にはジリジリと「背に腹は変えられない」という意識は高まっているようです。

理科系学生の就活サイトを運営するテックオーシャンの行った24年卒理系就活生対象のアンケートによると、就職先選びの第一条件は「給与・待遇」(55.1%)で、これは他の条件を大きく引き離しています。

また、エン・ジャパンの行った派遣社員に対する調査では、前年に比べて時給がアップした派遣社員は24%でしたが、その約半数は「時給の高い仕事への転職」によるもの。自ら、あるいは担当者を通じての「勤務先との交渉」などに比べてこちらも突出しています。



人材の大切さを感じていながらも、給与・待遇を改善するのに二の足を踏む中小企業。今後の経済状況にもよるのかもしれませんが、各社とも人材の確保のために対応が急がれている状況と言えそうです。



 

みなとみらい人事コンサルティングでは、人事・労務に関わる最新情報を元に、貴社の状況に合わせたご相談に応じています。

また、法令に即した給与制度や社内規定の変更などについてのご相談も可能です。

お問合せ・相談フォームから、お気軽にお声がけください。初回の相談は無料です。



 

ご参考:

■厚生労働省/中小企業の事業主の皆さまへ

「2023年4月より月60時間を超える時間外労働の割増賃金率が引き上げられます」

https://www.mhlw.go.jp/content/000930914.pdf

 

■エン・ジャパン株式会社/中小企業550社に聞いた「割増賃金率引き上げ」実態調査

(2022年12月~2023年1月)

https://corp.en-japan.com/newsrelease/2023/32081.html

 

■日本生産性本部/「人材を生かす賃金」に関するアンケート調査

(2022年12月)

https://www.jpc-net.jp/research/assets/pdf/innocon20221219_pres.pdf

 

■テックオーシャン株式会社/企業選びの条件「1位は〇〇」24卒理系就活生574名本音アンケート!(2022年7月)

https://techoffer.jp/rikeishukatsu/questionnaire2/

 

■エン・ジャパン株式会社/「派遣の給料・時給」についてのアンケート調査

(2022年12月〜2023年1月)

https://corp.en-japan.com/newsrelease/2023/31942.html





(文責:コラム担当/金田千和)

 

 


 

 


2023年の人事労務関係の法改正はここをチェック!   2023.01.08

2022年は、パワハラ防止措置の義務化や育児介護休業法の改正など、企業にとっては、働き方改革、そして進む働き方の多様化・オンライン化に対応することが多い1年でした。

2023年はさらにその流れへの対応が必要となる年と言えそうです。

 

法改正を中心に、2023年の3大ポイントについて解説します。




①月60時間超の時間外労働の割増賃金率が一律「50%」に

(改正労働基準法:2023年4月1日施行)



月60時間を超える時間外労働の割増賃金率について、今までは中小企業は25%の割増賃金を支払えば良いと猶予されていました。

 

しかし、2023年4月1日以降は、月60時間超の時間外労働について、大企業・中小企業を問わず一律「割増賃金率50%」に統一されます。(なお、1カ月の時間外労働が60時間以下の場合は従来通り25%の割増賃金でOKです)。

 

これに従って、社内の就業規定や賃金計算システムも対応が必要になってきますね。




②デジタルマネーでの賃金の支払いが解禁

(改正労働基準法:2023年4月1日施行)

 

賃金は労働基準法24条によって

(1)通貨(現金)で (2)直接労働者に (3)全額を (4)毎月1回以上 (5)一定の期日を定めて

 

支払われなければならないと定められています。つまり、現金を手渡しで支払うというのが原則なのです。

 

ただそれが現実的ではないため、労働基準法施行規則7条の2第1項によって、労働者の同意を得た場合に限り銀行口座などへの振り込みが例外的に認められてきました。

 

2023年4月からはこの例外事項に、デジタルマネー(PayPayなど)による給与の支払いも加わります。こちらも「労働者の同意を得た上で、一定の要件を満たした場合に限り」という条件がついています。

 

電子マネーが一般的になっている昨今、働く側からの要望から導入を検討する必要も今後は十分に考えられますね。




③育児休業の取得状況の公表が義務付けられる企業の範囲が拡大

(改正育児・介護休業法:2023年4月1日施行)



これまでは、「プラチナくるみん認定」(厚生労働省認定)を受けている企業のみ、育児休業の取得状況の公表が義務付けられていました。しかし、今後は「プラチナくるみん認定」の有無にかかわらず、常時雇用する労働者の数が1,000人を超える事業主は、毎年育児休業の取得状況を公表する義務対象になります。





みなとみらい人事コンサルティングでは、人事・労務に関わる最新情報を元に、貴社の状況に合わせたご相談に応じています。法令改正への対応についてのご相談もたまわります。お問合せ・相談フォームから、お気軽にお声がけください。初回の相談は無料です。



ご参考:

 

■厚生労働省/リーフレット:「月60時間を超える時間外労働の割増賃金率が引き上げられます」

https://www.mhlw.go.jp/content/000930914.pdf

 

■厚生労働省「労働基準法施行規則の一部を改正する省令案の概要」https://www.mhlw.go.jp/content/11201250/001005110.pdf

 

■厚生労働省/ウェブサイト「くるみんマーク・プラチナくるみんマーク・トライくるみんマークについて」

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kodomo/shokuba_kosodate/kurumin/index.html



(文責:コラム担当/金田千和)


 

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当事務所セミナー会場(27Fスカイラウンジ)で、当事務所が独自にテーマを設定し、お申し込み頂いた、複数の会社様にご参加頂くものです。

セミナー開催実績例
  • 介護事業者様向け「改正介護保険法セミナー」
  • 介護事業者様向け「介護労働環境向上奨励金セミナー」 3回
  • 新規採用をお考えの事業者様向け
    「元ハローワーク職員が教える!求人助成金セミナー」
  • 飲食店様向け「元ハローワーク職員が教える!求人助成金セミナー」

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講演実績

日本経営開発協会様 御紹介
市川港開発協議会様 主催 研修

「マイナンバー通知開始!
今知りたいマイナンバー制度の傾向と対策」

【参加者様からのお声】

  • 非常に分かりやすく、90分飽きさせることのない素晴らしいものだった。
  • 非常に役に立ち、興味が持てる内容だった。
  • 普段は講義に集中するのは難儀なのだが、話のスピード、声のトーン、間、どれを取っても感心するばかりだった。
  • マイナンバーが今後いろいろな問題を引き起こす可能性があることがよくわかり、大変勉強になった。早期に確実な運用体制を社内に確立させなければと思った。

一般社団法人 港湾労働安定協会 様 主催
雇用管理者研修「職場のメンタルヘルスに関して(会社を守る職場のメンタルヘルス対策)」

【参加者様からのお声】

  • メンタルヘルス対策は今後も重要になってくると思うので、このような研修会を増やして貰いたい。
  • 社会保険労務士による内容を次回もお願いしたい。
  • メンタルヘルス関係で初めて面白い(役に立つ)情報が聞けたと思います。
  • 大変に良い研修ですので、これからも続けて貰えるとありがたいです。
  • 中間管理職として守るべきというか、部下に対してどのような人事労務管理をすればよいのか、中小企業向けに別途講習会をやってほしいと思った。
  • 株式会社LEC 様 主催
    「介護雇用管理研修」業務委託登録講師
  • 株式会社フィールドプランニング 様 主催
    「派遣元・派遣先責任者講習」業務委託主任講師
  • 神奈川韓国商工会議所様 主催
    経営者セミナー「お役立ち助成金講座
    (雇用の確保と5年ルールへの対応策)」
  • 日本経営開発協会様 御紹介
    株式会社根布工業様 主催
    安全大会「入ってないと、どうなっちゃうの?社会保険のこわ~いお話」
泉文美 講師紹介ページ

講演会の講師紹介・講師派遣なら講演依頼.com

研修について

当事務所代表が、会社様のご依頼に基づき、会社様の具体的な人事労務に関わる内容(個別事案)について、オーダーメイドのプログラムを作成し、社員の皆様に研修するものです。

研修のご依頼例

  • 就業規則を変更したので、わかりやすい説明会を開いてほしい
  • 給与規定を見直したので、従業員に説明をしてほしい
  • 従業員向けの、接客マナー、敬語などのレッスン会をしてほしい

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ハッケン!リクナビ派遣に「働き改革!派遣社員が選べるふたつの雇用とは」と題する記事を執筆しました。

「働き方改革!派遣社員が選べるふたつの雇用とは」

「近代中小企業」2月号

「近代中小企業」2月号

「近代中小企業」2月号に記事を執筆しました。

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「SR」 9月号

SR 9月号

ハローワークを始め、社会保険事務所(現:年金事務所)、労働基準監督署でも勤務経験を持ち、「お役所の裏事情に詳しい社労士」として定評のある我がみなとみらい人事コンサルティング代表。

ハローワークでの勤務経験を買われ、日本法令様出版の「SR 9月号」に記事を執筆しました。

(第27号 2012年8月6日発売)

元職員が指南する!ハローワークの効果的な利用の仕方

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