降格・降給はどこまで認められる?派遣会社の人事リスク対策と実務対応ガイド
2025.10.24
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◆はじめに:成果主義の時代に「降格・降給」は避けられないテーマ
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近年、労働市場の流動化やジョブ型雇用の浸透により、
「成果主義的な人事評価制度」を導入する企業が増えています。
派遣業界も例外ではありません。
派遣スタッフの評価制度を整えたり、派遣先企業の基準に合わせて処遇体系を見直すなど、
これまで以上に「成果」「役割」「ジョブ」に基づく賃金決定が求められるようになっています。
その一方で、
「成績が上がらない社員を降格できるのか?」
「評価が低いスタッフの給与を下げてもいいのか?」
といったご相談を、派遣会社の経営者・人事担当者の方から受けることが増えています。
一言で「降格・降給」といっても、実務的には非常にデリケートなテーマです。
誤った手続きや判断を行えば、
労働トラブルや訴訟リスクに発展する可能性すらあります。
本記事では、社会保険労務士の立場から、
派遣会社が知っておくべき「降格・降給」の法的ルールと、
実務でトラブルを防ぐための具体的な対策を詳しく解説します。
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◆第1章 そもそも「降格」「降給」とは何か?
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まず、基本的な用語を整理しておきましょう。
**降格**とは、職位や役職を引き下げること。
例えば「部長から課長に戻す」「チームリーダーを外れる」といった人事上の措置です。
一方、**降給**とは、給与そのものを引き下げること。
降格に伴って給与が下がるケースもあれば、
職位はそのままで評価や成果に応じて給与が下がるケースもあります。
特に近年は「成果主義型賃金制度」の普及により、
従来の“年功的な給与カーブ”ではなく、
「実績・成果・役割に応じて給与を上下させる」仕組みが広がっています。
この流れの中で、「降格」「降給」の場面が増えているのです。
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◆第2章 降格・降給の法的根拠と人事権の限界
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企業には、人事権という大きな裁量があります。
従業員をどの部署に配置し、どの役職に就けるかを決めることは、
原則として会社の判断に委ねられています。
しかし、この「人事権」にも限界があります。
裁判例では次のように整理されています:
> 企業が降格を行う場合、就業規則に根拠があり、
> かつ合理的な理由と手続を経ていることが必要。
> (ハネウェルジャパン事件・東京高裁平成17年1月19日)
つまり、「就業規則に根拠があるか」「判断が合理的か」がポイントです。
たとえば、勤務成績や業務能力が著しく低下した場合に、
就業規則上「業務上の適性に応じて職位を変更することがある」と定められていれば、
一定の範囲で降格は認められます。
ただし、**賃金の減額**を伴う場合はより慎重な対応が必要です。
就業規則に「評価に応じて賃金を改定する」と明記されていなければ、
たとえ人事権の範囲内であっても、給与の引き下げは無効と判断されるリスクがあります。
また、明確な基準がなく恣意的に降格を行った場合、
「権利の濫用」として無効とされる可能性もあります。
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💡 **ポイントまとめ**
- 降格そのものは人事権の範囲内
- ただし、賃金減額を伴う場合は就業規則に明記が必要
- 恣意的・報復的な降格は「権利の濫用」として無効
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◆第3章 ジョブ型雇用の普及と「降級」の新しい論点
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2024年8月、厚生労働省が「ジョブ型人事指針」を発表しました。
これは、職務や役割に応じて給与を決定するジョブ型制度の普及を促すための指針です。
※参照)厚生労働省「職能給」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/syokumukyu.html
ジョブ型では、従業員一人ひとりに「職務(ジョブ)」が明確に定義され、
その職務価値に応じて給与や等級が設定されます。
このため、職務が変われば賃金も変わるのが当然となります。
つまり、職務変更に伴う「降級(等級の引き下げ)」が行われることもあります。
ただし、この場合も就業規則上に「職務・役割変更に応じて等級・賃金が変更される」旨を
明記しておくことが必須です。
大阪地裁の「CFJ合同会社事件」(平成25年2月1日)では、
職務変更に伴う賃金減額が就業規則上に明記されていたため有効と判断されました。
一方で、根拠が曖昧で勤務成績の不良が明確でない場合には、
降級が「退職勧奨の一環」とみなされ、無効とされた例もあります。
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💡 **ジョブ型人事での注意点**
- 職務ごとに等級と給与が定義されているか
- 職務変更に伴う給与変更ルールが明文化されているか
- 降級の判断に客観的根拠があるか
派遣会社がジョブ型を取り入れる場合、
派遣スタッフの職務範囲と評価方法を明確に定義しないと、
トラブルの火種となりかねません。
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◆第4章 派遣会社特有の「降格・降給」リスク
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派遣会社の場合、
降格・降給のトラブルは「本社社員」だけでなく、
「派遣スタッフ」との関係でも発生します。
特に次のような場面は要注意です。
- 派遣先の評価結果をもとに賃金を見直す場合
- 派遣契約の更新時に給与水準を変更する場合
- 派遣先変更に伴い、職務内容が軽くなった場合
これらはいずれも「降給」に該当する可能性があります。
そのため、
・派遣契約書や就業規則に「評価に応じて賃金を改定する」旨を明記する
・派遣先評価をそのまま反映せず、自社基準で確認する
・説明責任を果たし、本人に納得してもらう
といったステップが欠かせません。
派遣スタッフの場合、
正社員以上に「労働条件の説明責任」が重視されます。
わずかな対応ミスでも「不当な扱い」と受け取られ、
トラブルやSNS投稿などに発展するケースもあります。
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◆第5章 就業規則と人事評価制度の連動がカギ
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実務上、「降格・降給」のトラブルを防ぐ最大のポイントは、
**就業規則と人事評価制度を連動させること**です。
就業規則に「人事評価の結果により職位・賃金を変更することがある」と明記し、
人事評価制度には「評価項目・判定基準・見直し手順」を定義する。
この二つが連動していれば、
「恣意的に降格された」「理由が分からない」といった主張を防ぐことができます。
評価結果を本人にフィードバックし、
改善のための支援や目標設定を行うことで、
“懲罰的な降格”ではなく“成長支援型の人事措置”として理解されやすくなります。
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◆第6章 トラブルを未然に防ぐ5つの実務対策
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1️⃣ **就業規則の整備**
降格・降給の基準と手続を明文化し、評価制度との整合性を確保。
2️⃣ **評価制度の透明化**
評価項目や基準を社員に説明し、納得感を高める。
3️⃣ **人事記録の保管**
評価結果や面談記録を残し、判断の合理性を示せるようにする。
4️⃣ **降格・降給前のフォロー面談**
いきなり通知せず、改善機会や支援策を提示する。
5️⃣ **派遣スタッフへの説明責任の徹底**
契約条件変更時には必ず書面で説明し、同意を得る。
これらを徹底するだけで、
後々の紛争リスクを大幅に減らすことができます。
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◆第7章 制度改定のタイミングで専門家に相談を
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成果主義やジョブ型人事を導入する際、
最も多いトラブルが「降給の根拠不足」と「説明不足」です。
評価制度を作るだけでは不十分で、
それをどう賃金制度と連動させるか、どう就業規則に落とし込むかが重要です。
社内でルールを整えるのは簡単ではありませんが、
社会保険労務士などの専門家と連携すれば、
実務運用に耐えうる制度設計が可能です。
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◆まとめ:正しいルール整備が「信頼経営」を守る
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「降格・降給」は、企業経営において避けて通れない判断です。
しかし、そこに**明確なルール**と**公平な手続き**があれば、
社員の信頼を失うことなく、組織を健全に保つことができます。
派遣会社にとっては、
正社員だけでなく派遣スタッフとの関係性も含めた
多層的な人事リスクへの対応が求められます。
法的リスクを防ぎながら、公正で納得感のある制度を運用すること。
それが、成果主義時代を生き抜くための「労務管理力」と言えるでしょう。
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💬 **社会保険労務士からのメッセージ**
降格・降給の判断は、人の評価と生活に直結するため、慎重な運用が欠かせません。
「トラブルが起きてから」ではなく、「制度を見直す段階で」予防することが最も重要です。
就業規則の改訂、人事制度の見直し、派遣スタッフの評価制度設計など、
現場の実情に合わせたアドバイスを行っています。
初回相談は無料ですので、ぜひお気軽にご相談ください。
#社会保険労務士 #派遣会社 #降格 #降給 #成果主義 #ジョブ型雇用 #人事制度 #就業規則 #労務リスク #働き方改革
転倒労災が増加中!派遣業界で急務となる「疲労対策」とは
2025.10.22
## 目次
1. はじめに:なぜ今「転倒労災」が増えているのか
2. 数字で見る転倒災害の現状
3. 「高齢化」だけでは説明できない転倒増加の真の要因
4. 日本人の8割が「疲れている」—疲労社会ニッポンの実態
5. 疲労が引き起こす“転倒リスク”と“ヒヤリハット”
6. 派遣現場で疲労が蓄積しやすい3つの背景
7. 疲労を放置することがもたらすリスクとは
8. 社労士が提案する「疲労対策」3つの柱
9. 職場でできる具体的な取り組み事例
10. まとめ:疲労対策は「安全対策」であり「未来への投資」
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## 1. はじめに:なぜ今「転倒労災」が増えているのか
ここ数年、「転倒による労災」が増加しているという報告が相次いでいます。
転倒は一見すると“小さな事故”のように思われがちですが、骨折や長期離脱につながることも多く、企業にとっては大きなリスクです。
派遣業界でも、製造・物流・清掃・介護など、多様な現場でスタッフが働いており、
**「転倒災害」は決して他人事ではありません。**
なぜいま、転倒による労災が増えているのか。
その答えは、意外にも「疲労」というキーワードにありました。
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## 2. 数字で見る転倒災害の現状
厚生労働省の統計によると、2014年には約2万7000件だった転倒災害が、
2024年には3万6000件を超え、**10年間で約1万件も増加**しています。
中央労働災害防止協会(中災防)も、「転倒による労災」が現在もっとも課題となっていると警鐘を鳴らしています。
この増加の背景には、「現場作業員の高齢化」が指摘されることが多いですが、
実はそれだけでは説明がつかないのです。
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## 3. 「高齢化」だけでは説明できない転倒増加の真の要因
確かに高齢化は一因です。
筋力の低下やバランス能力の衰えが転倒リスクを高めることは事実です。
しかし、最近では**20〜40代の転倒災害も増加傾向**にあります。
その原因として無視できないのが、「疲労の蓄積」です。
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## 4. 日本人の8割が「疲れている」—疲労社会ニッポンの実態
一般社団法人日本リカバリー協会の最新調査(2025年)によると、
就労者の82.0%が「疲れている」と回答。
この数字は過去最高であり、わずか1年で30万人以上増えたといいます。
さらに、「すごく疲れている」と答えた人の割合も46.3%に上昇。
もはや**「慢性疲労」が社会全体に蔓延している**状態です。
疲労は単なる「だるさ」ではなく、
集中力・判断力・筋肉の反応速度を鈍らせることで、
作業中のミスや事故を誘発します。
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## 5. 疲労が引き起こす“転倒リスク”と“ヒヤリハット”
疲れていると、人は自分の身体感覚を正確に把握できなくなります。
たとえば、「足を上げたつもりが上がっていない」「段差に気づかずつまずく」など。
これは筋肉の疲労だけでなく、**脳の空間認知機能の低下**によるものです。
また、精神的な疲労がたまると注意力が散漫になり、
「ヒヤリハット」や「インシデント」が起こりやすくなります。
労働安全の分野では有名な**ハインリッヒの法則**があります。
1件の重大事故の裏には、29件の軽傷事故と、300件のヒヤリハットがあるという経験則です。
つまり、疲労を放置することは、**重大災害の予兆を見過ごす**ことにつながります。
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## 6. 派遣現場で疲労が蓄積しやすい3つの背景
派遣スタッフの現場は多様であり、
疲労が蓄積しやすい構造的な要因がいくつも存在します。
### ① シフトの不規則化
早朝・夜勤・二交代制など、生活リズムが乱れやすい勤務体系が多く、
睡眠の質が低下しやすい傾向があります。
### ② 現場異動の多さ
派遣スタッフは現場ごとに環境や作業ルールが異なり、
その都度新しい動きや人間関係に適応する必要があります。
心理的な疲労も蓄積します。
### ③ 慢性的な人手不足
人手が足りない現場では、一人あたりの作業負担が大きく、
「無理をしてでもやりきる」文化が根付きやすくなります。
その結果、疲労のサインを見逃してしまうのです。
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## 7. 疲労を放置することがもたらすリスクとは
疲労を軽視すると、転倒事故だけでなく次のようなリスクを招きます。
- **労災リスクの増加**
- **生産性の低下**(集中力・判断力の低下)
- **離職率の上昇**(心身の限界による離脱)
- **企業イメージの悪化**(安全対策への信頼喪失)
派遣スタッフが安心して働ける環境づくりは、
**派遣元・派遣先双方の責任**でもあります。
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## 8. 社労士が提案する「疲労対策」3つの柱
疲労対策は特別なことではありません。
次の3つの柱を意識するだけで、現場の安全性と生産性は大きく変わります。
### ① 休養・睡眠・リラクセーション支援
長時間労働を是正するだけでなく、
休憩の取り方や睡眠改善の工夫を促す取り組みが効果的です。
例えば「リカバリーデー(回復日)」の導入や、
職場での軽いストレッチタイムなど。
### ② 認知・行動トレーニングによるストレス軽減
疲労の背景には心理的なストレスもあります。
簡単なマインドフルネスやセルフケア研修などを通して、
“自分の疲れに気づく力”を育てることが重要です。
### ③ 上司と部下の対話による職場環境の調整
「最近疲れていない?」と声をかけ合える風土をつくること。
この一言が、事故を防ぐ最初のステップになります。
職場ミーティングで疲労度を共有し、
作業配分を調整する取り組みが有効です。
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## 9. 職場でできる具体的な取り組み事例
- **疲労チェックシートの導入**
定期的にスタッフの体調や気分を確認し、数値化して管理。
- **安全朝礼での“疲労トーク”**
その日のコンディションを一言ずつ共有するだけでも効果あり。
- **小休憩ルールの設定**
集中が切れる前に5分の休憩を挟む。
- **労務相談窓口の明確化**
体調不良やストレスを気軽に相談できる仕組みをつくる。
こうした小さな工夫の積み重ねが、
「疲れに強い職場文化」を育てていきます。
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## 10. まとめ:疲労対策は「安全対策」であり「未来への投資」
疲労は見えにくく、つい後回しにされがちです。
しかし、疲労こそが労災・転倒事故の“静かな引き金”になっています。
派遣業界では、派遣スタッフ一人ひとりの安全と健康が
企業の信頼を支える基盤です。
疲労を可視化し、組織全体で取り組むことは、
単なる「健康管理」ではなく、**「安全マネジメント」そのもの**です。
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社労士として現場を見ていると、
疲労対策に取り組む企業ほど、スタッフ定着率も高く、
現場の雰囲気が良くなる傾向があります。
転倒災害を防ぐ最初の一歩は、
「疲れていないか?」と問いかけることから。
その声かけが、職場を守り、企業の未来を支える力になります。
ご相談の際は、当ホームページのお問合せ・相談フォームから、お気軽にお声がけください。
初回のご相談は無料です。
【参照記事】
https://news.yahoo.co.jp/articles/bbb1506ba9753f0ff71b544fcd8318f494c8d313?page=2
【参考リンク】
厚生労働省「両立支援におけるストレスマネジメント」
https://chiryoutoshigoto.mhlw.go.jp/column/column_03.html
#労災防止 #派遣業界 #疲労対策 #安全衛生 #働き方改革 #社会保険労務士
群馬県で168事業所が是正勧告 派遣会社が今すぐ見直すべき「長時間労働リスク」とは
2025.10.20
### はじめに:またも浮き彫りになった「長時間労働」という現実
群馬労働局が2024年度の監督結果を発表し、違法な長時間労働などの労働基準法違反で**168の事業所に是正勧告**が出されたことが明らかになりました。
さらにそのうち、**月80時間を超える「過労死ライン」**を超えた事業所は93カ所、**100時間超**のケースも47カ所に上っています。
つまり、群馬県だけで年間100社以上が「過労死ライン」を超える労働時間を従業員に課していたという事実です。
この数字は決して地方特有の問題ではなく、全国どこでも起こり得る現実を象徴しています。
この記事では、社会保険労務士の視点から
派遣会社が直面しやすい「長時間労働リスク」について、法的観点・実務対応・再発防止策を交えて詳しく解説します。
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### 1. 是正勧告の背景にある「見えない長時間労働」
群馬労働局の発表によると、2024年度に監督指導を受けたのは501の事業所。
そのうち**385事業所(約77%)が法令違反**とされました。
違反内容の内訳は以下の通りです。
- 違法な時間外労働:168事業所
- 残業代の不払い:29事業所
- 健康診断の未実施など健康管理措置違反:87事業所
業種別では、**製造業が最多の45事業所**、次いで**運輸交通業が27事業所**。
いずれも「人手不足」「納期プレッシャー」「取引先の要求」といった外的要因の影響を強く受ける業種です。
これらの数字から見えてくるのは、
「長時間労働は特殊な企業の問題ではなく、構造的な課題になっている」
ということです。
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### 2. 派遣会社にとって他人事ではない「長時間労働」
多くの派遣会社では、労働時間の管理を派遣先任せにしてしまうケースが見られます。
しかしこれは大きなリスクです。
厚生労働省が定める「労働者派遣の適正な運営のための指針」では、
派遣元にも以下のような義務が課せられています。
> 派遣元事業主は、派遣先での派遣労働者の労働時間の状況を把握し、必要に応じて派遣先に対して改善を求めること。
つまり、派遣先が違法な長時間労働を行っていた場合、
派遣元も「監督・是正を怠った」と判断されるリスクがあるのです。
これは、単に法令違反にとどまらず、**派遣契約の信頼関係**や**労働者の安全配慮義務**にも影響します。
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### 3. 現場で起こっている「見えにくい労働時間」
実際に、派遣社員の方からは次のような相談が寄せられることがあります。
> 「派遣先の社員と同じように残業しているが、申告しづらい」
> 「派遣先が忙しく、毎日2時間以上の残業が続いている」
> 「残業時間が把握されていない気がする」
こうした「見えない残業」は、記録上の労働時間には現れません。
特に、派遣社員がタイムカードを派遣先のシステムで管理している場合、
派遣元がそのデータをリアルタイムで確認できないことが多いのです。
結果として、派遣元が「残業が多い」と気づくのは、
本人の体調不良や契約更新の段階になってから――というケースも少なくありません。
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### 4. 長時間労働がもたらす3つの重大リスク
長時間労働を放置すると、派遣会社には以下のようなリスクが発生します。
#### (1)法的リスク
労働基準法違反の連帯責任、労災認定、行政指導の対象となる可能性があります。
#### (2)人材リスク
派遣社員の健康悪化や離職率の上昇につながります。
結果として「人が定着しない派遣会社」としての評価が下がります。
#### (3)取引リスク
派遣先での労務トラブルがニュースになれば、他の取引先にも影響を与えかねません。
企業間の信頼関係を損なうリスクは非常に大きいです。
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### 5. 派遣元が今すぐ取り組むべき「3つの基本対策」
社会保険労務士として、派遣会社の皆さまに特に意識していただきたい対策は次の3つです。
#### ① 派遣先の労働時間を「見える化」する
派遣社員の勤怠データを共有し、週単位・月単位で労働時間を確認する仕組みを作りましょう。
勤怠システムの連携や、派遣先とのデータ交換ルールを明確にすることがポイントです。
#### ② 健康管理の徹底
定期健康診断、ストレスチェックの実施状況を確認し、異常があれば早めに面談・対応を行う。
特に「残業が多い社員」へのフォロー体制を整えることが重要です。
#### ③ 36協定・労使協定の再点検
「36協定」が形式的になっていないか、実態と乖離していないかを確認します。
特別条項付き協定が必要な場合は、上限時間や手続きも慎重に見直しましょう。
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### 6. 派遣先とのコミュニケーションが鍵
長時間労働の是正は、派遣先との関係構築なしには実現できません。
派遣元が一方的に「是正してください」と言っても、現場は動きません。
理想的なのは、**「労務改善を一緒に進めるパートナー」**という立場を築くこと。
そのために有効なのが、定期的な「労務コンディション共有会議」です。
- 派遣社員の労働時間・残業傾向の共有
- 健康診断結果やストレスチェック結果のフィードバック
- 派遣先・派遣元双方の課題共有と改善策検討
このような会議を四半期ごとに実施するだけで、労務トラブルの芽を早期に摘むことができます。
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### 7. データドリブン労務管理のすすめ
近年では、AIやクラウド勤怠システムを活用した「データ労務管理」が主流になりつつあります。
たとえば、勤怠データを自動集計して残業時間が上限に近づいたら通知する仕組みを導入するなど、
“人が気づく前にシステムが警告する”仕組みを整えるのです。
データに基づく管理は、派遣社員の健康を守るだけでなく、
派遣元・派遣先双方の「説明責任」を果たすうえでも非常に有効です。
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### 8. 「働き方改革」は派遣業にこそ必要
長時間労働の是正は、製造業や運輸業だけでなく、**人材派遣業界全体の課題**です。
「派遣先がそう言っているから」「現場が忙しいから」といった理由で
放置してきた慣習を見直す時期に来ています。
派遣社員の労働環境を整えることは、
最終的に「優秀な人材が集まり、長く働いてくれる派遣会社」をつくることにつながります。
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### 9. 是正勧告を「自社の警鐘」として捉える
今回の群馬労働局の是正勧告168件という数字は、
業界全体にとって「自社も他人事ではない」という警鐘です。
- 自社の派遣社員の労働時間は把握できているか?
- 派遣先の36協定内容を確認しているか?
- 健康管理体制は十分か?
これらを一つずつ点検するだけでも、再発防止につながります。
まずは「見える化」から始めてみましょう。
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### 10. まとめ:人を守ることが、会社を守ること
長時間労働の是正は、単なる法令順守ではありません。
それは、**働く人の命と健康を守るための最低限のルール**です。
派遣元がこのルールを自らの経営軸に据えることで、
結果的に「信頼されるパートナー企業」としての価値を高めることができます。
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👩💼 **社会保険労務士としてのメッセージ**
私はこれまで、多くの派遣会社の労務改善を支援してきましたが、
「早めの対策をしておけば防げた」ケースが非常に多いと感じています。
働く人を守ることは、派遣会社の信頼を守ること。
この2つは決して別物ではありません。
今日の記事が、皆さまの労務管理を見直すきっかけになれば幸いです。
ご相談の際は当ホームページのお問合せ・相談フォームから、お気軽にお声がけください。
初回のご相談は無料です。
【参照記事】
https://news.yahoo.co.jp/articles/86c70f7e12d448b871d93d08376b36d5c6257768
#派遣会社 #労務管理 #長時間労働 #社会保険労務士 #是正勧告 #働き方改革 #群馬労働局 #人材ビジネス #健康経営 #人事労務
11月は「過労死防止啓発月間」──派遣業界が労務リスクを減らすための実践チェックリスト 2025.10.17
### はじめに:11月は「過労死防止啓発月間」
毎年11月は、厚生労働省が定める「過労死等防止啓発月間」です。
これは、過労死や過労自殺をなくすために、国全体で労働環境を見直そうという取り組み。
期間中は全国47都道府県で「過労死等防止対策推進シンポジウム」が開催されるほか、
「過重労働解消キャンペーン」として、企業への重点的な監督指導や相談窓口の設置が行われます。
ここ数年で働き方改革が進んだとはいえ、
「サービス残業」「長時間労働」「休みが取れない」といった問題は依然として現場に根強く残っています。
特に派遣業界では、
「派遣先の管理下にあるスタッフの労働時間をどう把握するか?」
という点が非常に難しく、労務リスクを抱えやすい業界構造にあります。
今回は、社会保険労務士の視点から、
この啓発月間にあわせて派遣会社が見直すべき「労務リスクと実践チェックリスト」をまとめました。
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### 1. 派遣元としての「労務管理責任」を再確認する
まず大前提として、派遣スタッフの労働時間・健康管理については、
派遣先だけでなく「派遣元」も責任を負っています。
労働者派遣法では、派遣元はスタッフの「雇用主」として、
安全衛生や労働条件の確保に関する義務を明確に負っています。
つまり、
「派遣先に任せているから大丈夫」という考え方は、
法的には通用しないのです。
特に、派遣先が長時間労働を強いていたり、
残業申請が適切に行われていなかった場合、
派遣元にも監督責任が問われる可能性があります。
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### 2. 厚労省が重点的にチェックするポイント
厚生労働省の「過重労働解消キャンペーン」では、
以下の3つの観点で重点的に監督指導が行われます。
- 36協定を超える長時間労働
- 賃金不払残業(サービス残業)
- 健康障害リスク(過労死ライン超の勤務)
これらはどれも、派遣会社にとって“他人事ではない”テーマです。
特に、派遣スタッフが複数の現場に関わるケースや、
派遣先が独自に勤怠を管理している場合、
派遣元が把握できていない「隠れ残業」が発生していることも少なくありません。
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### 3. 労務リスクが顕在化する「3つの瞬間」
私がこれまで顧問先で見てきた中で、派遣会社が労務トラブルに発展しやすい瞬間は、主に次の3つです。
1. **勤務時間の申告が派遣先任せになっているとき**
→ 派遣スタッフの勤務実績が正確に報告されず、後で残業代請求になることも。
2. **体調不良やメンタル不調に早期対応できなかったとき**
→ 退職や労災申請につながり、企業イメージにも影響。
3. **36協定の内容が現場実態と乖離しているとき**
→ 実際の残業が協定を超えており、監督指導で是正勧告を受けるケースも。
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### 4. 労務管理の“見直し”が必要なサイン
次のような兆候が見られたら、
社内の労務管理体制を早急に見直すタイミングです。
- 勤怠データの提出が毎月ギリギリになっている
- 派遣先との報告ルールが人によって違う
- 有給休暇の取得状況を把握できていない
- 月末に「残業時間の修正」が頻発している
- 「派遣スタッフの離職理由」が曖昧
こうした“管理のほころび”は、日常業務では見逃されがちですが、
放置すると、会社全体のコンプライアンスリスクに発展しかねません。
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### 5. 実践チェックリスト:派遣会社が今すぐ取り組むべき5項目
この11月、ぜひ次の項目を社内で点検してみてください。
✅ **① 労働時間の把握方法は派遣元でも確認できるか?**
→ 勤怠システムを活用し、派遣先任せになっていないかを確認。
✅ **② 36協定の内容は現場の実態に即しているか?**
→ 年度更新時に形式だけの協定になっていないか見直しを。
✅ **③ 残業の申請・承認ルールは明確か?**
→ 「上司の口頭指示だけ」で残業していないか要確認。
✅ **④ 健康フォロー(面談・アンケートなど)を実施しているか?**
→ 長時間勤務者への面談記録が残っているかチェック。
✅ **⑤ 派遣スタッフからの相談ルートは確保されているか?**
→ 労働相談窓口を明確にし、気軽に声を上げられる雰囲気を作る。
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### 6. 実際に取り組む企業の好事例
ある中堅派遣会社では、
勤怠管理を「派遣先+派遣元の両方で確認」できるクラウドシステムを導入しました。
スタッフがスマホで打刻し、派遣先の承認を得た上で、
派遣元がリアルタイムに勤務状況をチェック。
結果として、
・残業時間の月次修正がゼロに
・過重労働者の早期発見が可能に
・スタッフ満足度が向上し、離職率が約20%改善
という成果が生まれました。
“仕組みで防ぐ”ことが、いちばん確実なリスク対策です。
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### 7. 「法令遵守」だけでなく「信頼獲得」のために
労務管理は「罰則を避けるため」ではなく、
「人と企業が長く信頼関係を築くため」のものです。
派遣スタッフにとって、
“安心して働ける環境”は何よりのモチベーションになります。
一方、派遣先企業にとっても、
「きちんと管理できる派遣元」と仕事をしたいのは当然のこと。
つまり、労務管理の質を高めることは、
派遣先との取引拡大にもつながる“攻めの施策”なのです。
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### 8. 社労士が見てきた「現場のリアル」
私が顧問として関わってきた中で、
多くの派遣会社が抱える課題は「制度設計」よりも「運用の徹底」にあります。
例えば、36協定は作っていても、
現場の管理者がその内容を理解していないケースが多い。
あるいは、
勤怠入力の締めが派遣先によって異なり、
最終的に派遣元がデータを集約できない──そんな問題もあります。
重要なのは、“仕組み”よりも“人が動く運用”。
たとえば以下のような工夫が有効です。
- 週1回、勤怠報告を簡易的に共有する
- 月1回、管理担当者間で情報交換ミーティングを行う
- 長時間勤務者をシステムで自動通知する
小さな取り組みでも、継続すれば確実にリスクが減ります。
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### 9. 今こそ「働き方を見直す」タイミング
過労死防止啓発月間は、単なるキャンペーンではありません。
「会社として働かせ方を見直す」ための絶好の機会です。
この1カ月間だけでも、
・自社の36協定を読み直す
・派遣先との情報共有体制を確認する
・スタッフの声を聞くミーティングを行う
といった小さなアクションを実行してみてください。
その積み重ねが、企業文化の改善につながります。
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### 10. まとめ──“守りの労務管理”から“信頼の労務管理”へ
派遣業界は、人を扱うビジネスでありながら、
最も「人の働き方」にリスクが集中する業界でもあります。
だからこそ、法令遵守をベースに、
人を大切にする仕組みを整えることが、
最終的に企業価値を高めることにつながります。
この11月、社内で「労務管理チェック会議」を開いてみてください。
ほんの1時間でも、課題と改善点が見えてくるはずです。
社会保険労務士として、
私は派遣業界の現場を知る立場から、
“机上の理論ではなく、現場で回る仕組み”づくりを支援しています。
過労死防止啓発月間をきっかけに、
「守る労務」から「育てる労務」へとシフトしていきましょう。
もし、働き方や労務管理で不安があれば、
ぜひ一度ご相談ください。
当ホームページのお問合せ・相談フォームから、お気軽にお声がけください。
初回のご相談は無料です。
【参照記事】
https://apj.aidem.co.jp/current/detail/5754.html
【参照リンク】
厚生労働省「過重労働解消キャンペーン」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/roudoukijun/campaign_00004.html
#過労死防止 #労務管理 #派遣会社 #働き方改革 #社労士コラム #労働時間管理 #36協定 #健康経営
2026年カスハラ対策義務化で何が変わる?派遣会社が今すぐ取り組むべきこと 2025.10.15
### 1. はじめに:カスハラ防止が「企業の義務」になる時代へ
2026年中に施行予定の「改正労働施策総合推進法」によって、
企業は「カスタマーハラスメント(カスハラ)」防止のための措置を講じることが義務化されます。
これまでは、パワーハラスメント(パワハラ)やセクシャルハラスメント(セクハラ)など、
社内で起きるハラスメントに対して企業の防止義務が定められていました。
しかし、「顧客から従業員に対するハラスメント」に関しては、明確な法的義務は存在していませんでした。
つまり、「お客様からの暴言」「過度なクレーム対応」「人格を否定するような要求」など、
従業員が日常的に受けていた精神的負担に対して、企業として守るための仕組みが不十分だったのです。
改正法の成立により、カスハラはようやく法の下で正式に「防止義務の対象」となりました。
これは、職場におけるメンタルヘルスや安全配慮義務の観点からも、非常に大きな一歩です。
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### 2. カスハラとは?その定義と派遣現場の実情
「カスタマーハラスメント(カスハラ)」とは、
顧客が企業やその従業員に対して、社会通念を超える不当な言動を行うことを指します。
典型的な事例としては、次のようなケースが挙げられます。
- 暴言や威圧的な態度を繰り返す
- 不当な要求を執拗に続ける
- 長時間にわたってクレーム対応を強要する
- SNSなどでの誹謗中傷
- 人格を否定するような言葉を投げつける
派遣スタッフの現場では、特に「派遣先の顧客」からこうした行為を受けるケースが少なくありません。
しかし、多くのスタッフは「お客様だから仕方ない」「派遣先との関係を悪くしたくない」といった理由から、
我慢してしまう傾向にあります。
結果として、心身の不調や離職につながるケースもあり、
企業にとっては“見えないコスト”として大きな損失となっています。
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### 3. 改正法の概要:企業に求められる対応
今回の改正では、以下の3点が企業に求められます。
#### ① 防止方針の明確化
カスハラに対する企業の基本的な考え方を明文化し、
全従業員が理解できる形で共有する必要があります。
社内ポリシーや就業規則に明記し、派遣先企業とも共有することが望まれます。
#### ② 相談体制・窓口の整備
被害を受けた従業員が安心して相談できる窓口を設けることが義務化されます。
担当者は守秘義務を持ち、適切な対応・助言を行う体制を整えることが求められます。
#### ③ 実効性の確保
単に「方針を掲げただけ」では不十分です。
教育・研修・マニュアル整備などを通じて、実際に防止策が機能するように運用することが必要です。
罰則規定は設けられていませんが、行政指導や公的評価、さらには取引先からの信用など、
実質的な社会的リスクを考えれば「やらない理由はない」と言えるでしょう。
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### 4. 同時改正:女性活躍推進法・男女雇用機会均等法
今回の法改正では、「女性活躍推進法」や「男女雇用機会均等法」に関しても重要な変更が行われました。
#### 女性活躍推進法の改正
従業員101人以上の企業に対し、
「女性管理職比率」と「男女の賃金差異」の公表が義務付けられます。
施行は2026年4月1日。
企業の透明性がより一層求められ、
「人材の見える化」を進めることが社会的責任となっていきます。
#### 男女雇用機会均等法の改正
採用活動中の学生に対するセクハラ防止も義務化されました。
特に採用担当者や面接官に対しては、明確なルールや教育体制の整備が必要です。
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### 5. 派遣会社が取るべき3つの実務対応
派遣会社にとって、今回の改正は“自社内の体制整備”だけでなく、
“派遣先との協力体制”が極めて重要になります。
#### ステップ①:現場の声を聞く
まずは、派遣スタッフ・営業担当・管理職などから、
現場で実際にどのような顧客対応が行われているかをヒアリングします。
「カスハラを受けたけど報告しなかった」というケースがないか確認することが第一歩です。
#### ステップ②:方針とマニュアルの整備
カスハラの定義や対応手順、報告ルート、派遣先への連絡方法などを具体的に文書化します。
派遣契約書には「カスハラ防止における協力条項」を盛り込むことで、
派遣元・派遣先双方の責任範囲を明確にできます。
#### ステップ③:教育と啓発
派遣スタッフ・営業担当・派遣先責任者など、立場ごとに適切な研修を実施します。
「我慢する」文化から「報告・相談する」文化へ。
相談しやすい環境をつくることで、問題の早期発見・再発防止につながります。
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### 6. カスハラ対策のポイント:派遣先との連携が鍵
派遣会社単独での対応には限界があります。
実際にカスハラが発生する現場は、派遣先企業であることがほとんどです。
そのため、派遣契約時や定例ミーティングなどを活用し、
派遣先と共に「カスハラ防止方針」を共有することが不可欠です。
派遣スタッフが安心して働ける環境を整えることは、
派遣先にとっても定着率の向上や生産性の向上につながるメリットがあります。
企業同士の協働で、より良い就労環境を築いていくことが理想です。
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### 7. カスハラ対策を「義務」から「企業文化」へ
今回の改正は単なる法令対応ではありません。
「従業員を守ること」が「企業を守ること」に直結する時代が来ています。
カスハラ防止を経営課題として位置づけることで、
企業のブランド価値や採用力も確実に向上します。
従業員が安心して働ける環境を整えることは、
結果的に顧客満足度やサービス品質の向上にもつながります。
「法に従う」だけでなく、「人を守る文化をつくる」ことが、
今後の企業経営における重要な視点になるでしょう。
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### 8. フリーランス保護にも広がる議論
改正法の付則には、「フリーランスとして働く人の保護を検討する」と明記されています。
働き方の多様化が進む中で、雇用関係にない立場の人たちに対しても、
ハラスメント防止や安全配慮が求められるようになる可能性があります。
派遣会社としても、業務委託契約を結ぶ外部人材への対応を見直すきっかけになるでしょう。
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### 9. 社労士の視点:法令対応と現場運用の“橋渡し”を
社会保険労務士として感じるのは、制度ができても「現場で機能しない仕組み」が多いということです。
たとえば、「相談窓口を設けたけれど、誰も使わない」「報告しても対応が遅い」など、
運用面での課題が必ず発生します。
大切なのは、“制度を現場で活かすこと”。
そのためには、
- 実際の相談対応フローを明確にする
- 担当者教育を継続的に行う
- 相談内容を匿名で共有し、再発防止に生かす
といった地道な仕組みづくりが必要です。
社労士としては、
就業規則・派遣契約・研修・相談体制の整備など、
「制度設計+運用支援」の両面から企業をサポートしていくことが求められます。
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### 10. まとめ:2026年に向けた「守るための準備」を今から
2026年のカスハラ防止義務化は、
すべての企業に「従業員を守る経営」を求める流れの象徴です。
派遣会社にとっては、
スタッフの安全と働きやすさを守ることが、
結果的にクライアント企業の信頼や自社の成長にもつながります。
「お客様は神様」という時代から、
「お客様も従業員も大切にする時代」へ。
今こそ、自社の現場を見直し、
相談体制や方針整備をスタートさせるタイミングです。
---
👩💼 社労士として、現場実務と法令の間に立ち、
派遣会社の皆さまが安心して対応できるようお手伝いします。
制度対応はもちろん、「現場で機能する仕組みづくり」を一緒に進めていきましょう。
当ホームページのお問合せ・相談フォームから、お気軽にお声がけください。
初回のご相談は無料です。
【関連記事】
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA027PU0S5A600C2000000/
【参考】
厚生労働省「令和7年の労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律(労働施策総合推進法)等の一部改正について」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyoukintou/zaitaku/index_00003.html
管理職の7割が“育成に悩む”時代へ──派遣業界に求められる次世代マネジメントとは 2025.10.14
## 1. はじめに:管理職の悩みは「部下育成」がトップに
「部下の育成が難しい」。
最近、企業の管理職の方からよく耳にする言葉です。
リクルートマネジメントソリューションズが2025年に実施した調査によると、
人事担当者・管理職層のいずれも**7割以上が「管理職に課題を感じている」**という結果が出ました。
その中でも最も多く挙げられたのが、**「メンバー育成」**です。
※参照記事)https://jinjibu.jp/news/detl/25574/?newstop=cate
この結果は、多くの業界で起きている「管理職の過重負担」や「育成ノウハウの不足」を
如実に示しているといえます。
そしてこの傾向は、派遣業界にも深く関係しています。
現場スタッフを支え、クライアントと信頼関係を築く“マネジメント力”が、
今、派遣会社の競争力を左右しているのです。
---
## 2. 調査が明かす「人事と管理職のギャップ」
調査の結果を詳しく見ると、
人事担当者と管理職の間で、課題に対する視点の違いが浮き彫りになりました。
人事は「管理職候補の不足」「育成の不十分さ」「女性管理職の割合」を問題視。
一方、現場の管理職は「業務負担の増大」「チームのモチベーション維持」に悩んでいます。
つまり、**人事が求める理想のマネジメントと、現場が直面する現実にはギャップがある**ということ。
派遣会社でも同様の現象が見られます。
本社の人事部門は「教育制度」「評価制度」の整備に力を入れていても、
現場のコーディネーターや営業担当者は「日々の業務に追われて実施できない」と感じている。
このズレが続くと、管理職のモチベーションは下がり、
育成文化が根づかないまま、現場力が低下していくリスクがあります。
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## 3. 派遣業界のマネジメント構造と「プレイングマネジャー」の現実
派遣会社では、管理職がプレイヤー業務を兼ねるケースが多くあります。
営業も担当しながら、スタッフ面談、クライアント対応、契約管理…と、
“やることリスト”が尽きません。
こうした「プレイングマネジャー」体制では、
部下の育成やチームの関係性づくりが後回しになりがちです。
さらに、派遣スタッフの入れ替わりも多いため、
「せっかく育ててもすぐに辞めてしまう」という無力感を抱える管理職も少なくありません。
この状況を放置すれば、
現場のリーダーが疲弊し、結果としてスタッフ定着率やクライアント満足度にも影響が及びます。
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## 4. “管理しすぎない”組織へ──「自律共創型組織」の台頭
調査によれば、60%以上の管理職が、
「会社から自律共創型組織への移行を求められている」と回答しました。
自律共創型組織とは、
「チームで考え、柔軟に価値を生み出す組織」を指します。
これまでのように上司がすべてを管理するのではなく、
メンバー自身が目的を理解し、自ら動くことを重視します。
このスタイルに移行した企業では、
・チームワークの向上
・メンバーの主体性向上
といった成果が報告されています。
派遣業界においても、
現場スタッフ一人ひとりが自律的に考え、行動できる環境を作ることが重要です。
そのためには、「管理職が指示を減らし、対話を増やす」ことが鍵になります。
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## 5. 新時代のリーダー像──「創造革新タイプ」の管理職
今回の調査の大きな特徴は、
今後求められる管理職のタイプが明確に変化している点です。
従来主流だったのは「組織管理タイプ」「実務推進タイプ」。
しかし、今後増やすべきとされたのは「企画開発タイプ」や「創造革新タイプ」でした。
「創造革新タイプ」とは、変化を恐れず、
新しい価値を生み出すリーダーのこと。
彼らは現場の課題をチャンスに変え、
組織に新しい風を吹き込む存在です。
派遣会社でいえば、
クライアントと協働して新たな人材提案を行ったり、
スタッフのキャリア支援を通じて現場の信頼を高めたりする管理職が該当します。
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## 6. 管理職が抱える「任せることの不安」
しかし、創造革新タイプのリーダーを育てるためには、
まず“任せる文化”を根づかせる必要があります。
調査では、「自律共創型組織の難しさ」として、
「仕事の割り当て」「新しいやり方へのチャレンジ」「自発的な情報共有」が上位に挙がりました。
つまり、任せることの難しさを多くの管理職が感じているのです。
派遣現場では、スタッフのスキルや勤怠に関する不安があり、
どうしても上司が細かく管理しがち。
しかし、それではメンバーの自律は育ちません。
“失敗を恐れず任せる”ことで、
初めて現場に成長の芽が生まれます。
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## 7. 人事と現場の「目線合わせ」が育成の出発点
育成において最も重要なのは、
**人事と現場の目線を合わせること**です。
人事は制度・仕組みを整える立場。
現場は実際に人を動かす立場。
どちらか片方だけでは、育成は機能しません。
たとえば派遣会社であれば、
「どんな人材を管理職にしたいのか」
「どんな育成行動を評価するのか」
といった基本方針を、人事と現場で共有することが欠かせません。
この“合意形成”こそが、育成文化を支える土台になります。
---
## 8. 社会保険労務士が見る「管理職育成の三本柱」
社会保険労務士として多くの派遣会社を支援してきた経験から、
管理職育成を機能させるための“三本柱”を提案します。
### ① 現場起点のマネジメント研修
一般的な座学ではなく、現場の事例を用いた「ケーススタディ型研修」が効果的です。
実際の派遣トラブルや育成の難しいケースをもとに、
どう対話し、どう支援するかを体感的に学びます。
### ② 「育てる行動」を評価に組み込む
売上や稼働率などの数字だけでなく、
部下育成・チーム貢献を評価項目に含めることで、
マネジメント意識が自然に高まります。
### ③ 管理職のメンタルケア
管理職は“支える側”であるがゆえに孤立しがちです。
社労士や外部コンサルタントが第三者的に相談を受ける仕組みを作ることで、
リーダーが安心してマネジメントに専念できるようになります。
---
## 9. 「創造革新タイプ」を育てる組織文化とは
「創造革新タイプ」を育てるには、
スキルよりも**文化の醸成**が重要です。
失敗を責めない文化、
アイデアを歓迎する文化、
意見を交わす場が日常的にある文化。
こうした土壌が整えば、
自然と挑戦する人が増え、組織に活気が生まれます。
派遣業界のようにスピードが求められる現場こそ、
“挑戦できる安全な環境”が成果につながります。
---
## 10. まとめ:マネジメントの再定義を
これまでの管理職像は「業務を遂行する人」でした。
これからの管理職像は、「人の成長を支援する人」へと変わります。
派遣会社においても、
スタッフや営業担当者の成長を支えるリーダーこそが、
真に価値を生み出す存在になるでしょう。
リクルートの調査が示すように、
「創造革新タイプ」の管理職を増やすことは、
単にマネジメントスタイルの転換ではなく、
企業文化を変える第一歩でもあります。
社会保険労務士として、
私たちは制度設計や研修の支援だけでなく、
経営者・人事・現場の“橋渡し役”として、
育成が自然に回る仕組みづくりをサポートしていきたいと考えています。
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### 最後に──派遣会社の皆さまへ
もし今、
「現場のマネジメントがうまくいかない」
「人を育てる仕組みが機能していない」と感じているなら、
まずは“管理職の育成の仕方”を見直してみてください。
管理職が変われば、現場が変わります。
現場が変われば、組織全体の風土が変わります。
そしてその変化の中心にいるのが、
「人の成長に寄り添うリーダー」──
まさに“創造革新タイプ”の管理職なのです。
当ホームページのお問合せ・相談フォームから、お気軽にお声がけください。
初回のご相談は無料です。
#マネジメント #人材育成 #派遣業界 #社会保険労務士 #組織開発 #働き方改革
2026年度派遣同一労働同一賃金労使協定セミナー(10/15)に登壇します 2025.10.11
### 1. はじめに:2026年度に向けた「労使協定見直し」のタイミングが到来
2020年4月から始まった「同一労働同一賃金」制度。
派遣会社の皆さまにとっては、すでに毎年の更新業務の一部として定着していることと思います。
ただ、2026年度に向けて、今まさに「見直しのタイミング」を迎えています。
なぜなら、制度がスタートしてから5年以上が経ち、
一般賃金の上昇や市場環境の変化により、
初期に策定した労使協定の前提がずれてきているケースが多いからです。
たとえば、次のようなお悩みを感じていませんか?
- 一般賃金の上昇率が高く、賃金テーブルの整合性が取れなくなっている
- 派遣料金が上げられず、協定上の水準との差が広がっている
- 職種区分や比較対象労働者の設定に迷いがある
- 労働局からの調査や是正指導が気になる
これらは、ほぼすべての派遣会社で共通して起きている課題です。
「うちは制度対応できている」と思っていても、
細かい部分で制度とのズレが蓄積していることが多いのです。
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### 2. 同一労働同一賃金とは?改めて基本を整理
「同一労働同一賃金」とは、
派遣社員であっても、同じ仕事をしている正社員と
不合理な待遇差があってはならないという考え方に基づく制度です。
派遣会社においては、次の2つの方式のどちらかで対応する必要があります。
1. **労使協定方式**:派遣元(派遣会社)が労使協定を締結し、賃金水準を自社で決める方式
2. **派遣先均等・均衡方式**:派遣先企業の正社員と比較し、同等の待遇を保証する方式
多くの派遣会社では「労使協定方式」を採用しています。
理由は、派遣先との情報共有負担が軽く、
運用を自社で完結できるためです。
しかし、この方式は「自社で正しく設計し、定期的に見直すこと」が大前提。
ここが難しく、現場の実務で悩まれる方が多いポイントです。
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### 3. 2026年度改定に向けた背景と国の動き
2026年度に向け、厚生労働省では「一般賃金水準」の見直しを予定しています。
具体的には、職業分類や賃金構造基本統計調査(賃金構造基本統計調査・いわゆる「賃構統計」)の更新が進められ、
新たな基準値が発表される見込みです。
これにより、2020年や2021年に策定した労使協定の賃金テーブルが
現行の水準よりも低く設定されているケースが増えることが予想されます。
つまり、**現行の協定をそのまま更新すると「法の趣旨に合わない」状態になるリスク**があるのです。
また、2024年以降、労働局による立ち入り・書面調査が強化されており、
労使協定の整合性や比較対象の妥当性を厳しく確認される傾向にあります。
したがって、「2026年度改定」は、単なる年次更新ではなく、
**制度全体を再設計する大きな節目**になると言えるでしょう。
---
### 4. 現場でよくある「5つの課題」
私が派遣会社様のサポートをしていて、特に多いご相談がこちらです。
1️⃣ **賃金テーブルの設計が複雑化している**
→ 各職種・地域・勤続年数を反映するとパターンが膨大になり、管理が難しい。
2️⃣ **一般賃金水準の上昇に派遣料金が追いつかない**
→ 顧客交渉が難しく、協定水準とのギャップが発生。
3️⃣ **事業所間で運用にばらつきがある**
→ 本社と支店で協定解釈が異なり、是正指導のリスクが生じる。
4️⃣ **職種設定や区分の判断が難しい**
→ 職務内容が多岐にわたり、統計上どの職種に当てはめるか分からない。
5️⃣ **労働局の是正指導に対応できていない**
→ 提示資料の整備や協定書の説明が不十分で、改善指導を受けるケースも。
これらは、決して一部の企業だけの問題ではありません。
むしろ「制度を真面目に運用している会社ほど悩みが深い」と言っても過言ではありません。
---
### 5. 厚労省ガイドライン改定の方向性
2026年度に向けて検討が進むガイドラインでは、次のような変更が焦点になると考えられます。
- 職種区分の再整理(特に事務・製造・技術系の境界明確化)
- 一般賃金水準の上方修正
- 教育訓練・福利厚生の均衡に関する指針強化
- 賃金テーブルの公開方法・説明義務の明確化
これらが確定すれば、労使協定書のフォーマット自体を
一部修正する必要が出てくる可能性があります。
つまり、「いまの協定をそのまま更新」では済まないということです。
セミナーでは、最新のガイドライン改定動向も詳しく解説いたします。
---
### 6. 格差是正とコストのバランスをどう取るか
「賃金水準を引き上げたいけれど、料金改定が難しい」
これは、どの派遣会社様からも共通して聞かれるお悩みです。
現実的には、
**待遇改善(=コストアップ)と経営の安定性**をどう両立するかがポイントです。
このバランスを取るためには、
・地域別・職種別の統計を正確に把握する
・段階的な昇給モデルを設定する
・派遣先との料金改定交渉に根拠を持たせる
といった“データに基づく運用”が欠かせません。
「制度を守ること」が「経営リスクを防ぐこと」に直結します。
---
### 7. 実際に起きやすいトラブル事例
いくつかの実例を挙げましょう。
- **事例①:協定更新時の賃金差異指摘**
→ 一般賃金との差が広がり、労働局から是正を求められたケース。
- **事例②:比較対象労働者の選定ミス**
→ 派遣先の正社員ではなく、契約社員を比較にしていた。
- **事例③:派遣先からのクレーム**
→ 協定内容を十分説明しておらず、派遣料金交渉でトラブルに発展。
- **事例④:労働者代表の選任手続きの不備**
→ 代表選出が形式的で、労働局に認められなかった。
これらは、少しの確認不足から起きやすいものですが、
是正指導になると、他の契約にも影響を及ぼすことがあります。
---
### 8. 労使協定方式は“経営戦略”の一部
労使協定方式は、単なる法令遵守のための仕組みではありません。
**「人材定着」「顧客信頼」「ブランド価値向上」**に直結する経営戦略の要です。
賃金水準を明確にし、合理的に説明できることは、
派遣社員から見ても「安心して働ける会社」である証拠になります。
また、派遣先企業にとっても、制度を理解し対応できている派遣会社は、
「信頼できるパートナー」として長期契約につながりやすくなります。
---
### 9. セミナーの概要と見どころ
そんな実務課題を踏まえ、
ユニテックシステム株式会社主催のオンラインセミナーにて、
私、社会保険労務士・泉文美が登壇いたします。
**テーマ**:2026年度の労使協定方式見直しポイントと実務対応
🗓 日時:2025年10月15日(水)14:00~14:45(オンライン開催)
💰 参加費:無料
🔗 お申し込みはこちら:
[セミナー詳細・申込ページ](https://www.cocripo.co.jp/webinar/94644a2f-3a26-424f-84ef-05086207015c/detail)
内容は、
・厚労省ガイドラインの最新情報
・協定書の再設計で見落としがちなポイント
・派遣料金・コストのバランスの取り方
・労働局対応の実務ヒント
など、すぐに実務に活かせる形でお伝えします。
---
### 10. まとめ:2026年に向け、今こそ「見直しの一歩」を
2026年度改定は、派遣会社にとって大きな転換点です。
「まだ先の話」と思っているうちに、
見直し作業や料金交渉の準備期間が足りなくなるケースも少なくありません。
今のうちに協定内容を棚卸しし、
最新のデータ・基準に沿って再設計することが、
リスク回避と信頼向上の第一歩です。
👩🏫セミナーでは、
「明日から使える実務ヒント」を具体的にお伝えいたします。
派遣業界の皆さま、ぜひこの機会に一緒に学びを深め、
2026年度を安心して迎えましょう。
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#同一労働同一賃金 #派遣会社 #労使協定方式 #社会保険労務士 #人事労務 #ユニテックシステム #2026年度改定 #セミナー情報
【令和7年版】派遣会社が賃上げと人材育成を両立できる「業務改善助成金」解説 2025.10.10
### はじめに:派遣業界に求められる“持続可能な賃上げ”
令和7年に入り、派遣業界を取り巻く環境は大きく変化しています。
人材不足の加速、採用コストの上昇、そしてクライアント企業からの「スキルの高い人材を」という要望。
こうした中で、派遣会社にとって避けて通れないテーマが**「賃上げ」と「人材育成」**です。
しかし、現実的には次のような課題を抱える会社が多いのではないでしょうか。
- 時給アップの原資をどう確保するか
- 教育研修にかけるコスト負担が重い
- 労務管理・人材マッチングに手間がかかり生産性が上がらない
こうした悩みをサポートするために、厚生労働省が令和7年9月に**「業務改善助成金」**を拡充しました。
本記事では、この助成金の仕組みと、派遣会社がどのように活用できるのかを、社会保険労務士の視点で詳しく解説します。
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### 1. 「業務改善助成金」とは?──賃上げと生産性向上を同時に支援
「業務改善助成金」は、事業場内最低賃金を一定額以上引き上げ、
そのうえで**生産性向上に資する設備投資や人材育成を行った企業に対し、費用の一部を助成**する制度です。
つまり、「賃上げ+改善投資」を行う企業を支援する仕組み。
賃上げのみならず、企業が中長期的に“生産性を上げながら持続的な賃上げを実現する”ことを目的としています。
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### 2. 令和7年度の拡充ポイント
今回の拡充(令和7年9月改定)では、次の3点が大きく見直されました。
1. **助成率・上限額の引き上げ**
小規模事業者を中心に、助成率が最大90%に引き上げ。
上限額も従来より高く設定されています。
2. **対象範囲の拡大**
生産性向上に寄与する「外部コンサルティング費用」や「教育訓練費用」も対象として明確化。
派遣業でも利用しやすくなりました。
3. **申請手続きの簡素化**
電子申請やテンプレート化された様式が導入され、事務負担が軽減。
これにより、「申請が面倒そう」と感じていた中小企業・派遣会社も、活用しやすくなっています。
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### 3. 助成対象となる具体的な取組内容
派遣会社の場合、業務改善助成金の対象になる取組は多岐にわたります。
以下のようなケースが代表的です。
- **人材育成・教育訓練費**
派遣スタッフや営業担当へのスキルアップ研修、キャリア形成支援、コンプライアンス研修など。
- **外部コンサルティング費用**
業務プロセス改善、人事制度設計、派遣先との契約見直しなどを目的とした専門家への依頼費。
- **システム導入・IT投資**
勤怠管理システム、マッチング支援ツール、労務管理クラウドなど、生産性を高めるシステム導入。
- **設備投資**
オフィス機器やデジタル化に関連する備品導入(※業務効率化に関連していることが条件)。
いずれも「業務の効率化」「人への投資」「労働環境の改善」に資する内容であれば対象になります。
---
### 4. 助成金の支給までの流れ
助成金は「申請前に賃上げ・投資計画を立てる」ことが前提です。
以下の流れで手続きを進めます。
1️⃣ **計画の策定**
賃上げ額、対象従業員、投資内容、費用見積もりを明確にします。
2️⃣ **申請書の提出**
都道府県労働局へ申請。交付決定通知を受け取るまで実施はできません。
3️⃣ **事業の実施**
計画通りに賃上げと投資を行います。
4️⃣ **実績報告と支給申請**
報告書類を提出後、審査を経て助成金が支給されます。
※ポイントは「計画前に動かない」こと。
すでに導入済み・実施済みの投資は対象外です。
---
### 5. 助成金額と助成率の目安
助成金の金額は、
「生産性向上のための投資額 × 助成率(最大90%)」または「上限額」のいずれか低い方となります。
令和7年度の一般的な上限は以下のとおりです。
| 引上げ額 | 上限額(中小企業) | 助成率 |
|------------|----------------|-----------|
| 30円以上 | 50万円〜200万円 | 4/5〜9/10 |
| 60円以上 | 200万円〜400万円 | 4/5〜9/10 |
| 90円以上 | 300万円〜600万円 | 4/5〜9/10 |
つまり、**中小の派遣会社でも最大600万円近くの助成が可能**です。
---
### 6. 賃上げの定義と注意点
業務改善助成金の「賃上げ」は、単に給与を上げることではありません。
具体的には「事業場内最低賃金」を一定額以上引き上げることが条件です。
たとえば、
- 派遣スタッフの時給単価を引き上げる
- 内勤社員の基本給を見直す
- 契約更新時に新しい賃金規定を適用する
といった形で「全社的に最低賃金を底上げ」することが求められます。
一時的な手当やボーナスではなく、「恒常的な賃金の引上げ」がポイントです。
---
### 7. 派遣会社が活用すべき理由
派遣業界では、他業種と比べて「教育訓練費」が助成対象になりやすい特徴があります。
なぜなら、派遣スタッフのスキルアップが事業全体の生産性向上に直結するからです。
📌 例えばこんなケース:
- IT派遣スタッフにプログラミング基礎研修を導入
- オフィス派遣スタッフにExcel・ビジネスマナー研修を実施
- 営業担当に労務コンプライアンス研修を実施
これらはいずれも助成対象に含まれる可能性があります。
教育投資は「短期的な費用」ではなく「長期的な資産」。
派遣会社こそ、人材育成を助成金で支える好機です。
---
### 8. よくある誤解と落とし穴
助成金の相談を受けていると、次のような誤解が少なくありません。
❌ 「すでに導入したシステムも対象になる」
→ 対象は**申請後に実施するもののみ**です。
❌ 「個人研修も全部助成される」
→ 助成対象は「全体の生産性向上につながる」研修。特定社員だけでは難しい場合も。
❌ 「派遣スタッフが少ないから関係ない」
→ 正社員・契約社員を含む「労働者」がいれば対象。少人数でも申請可能です。
手続きや要件を誤解すると、せっかくのチャンスを逃してしまうこともあります。
---
### 9. 成功するための実践ポイント
社労士として助成金活用を支援してきた経験から、
成功する会社に共通する3つのポイントを挙げます。
1️⃣ **「目的」を明確にする**
助成金を“もらうこと”が目的ではなく、“人材育成や業務効率化”という目的を明確に。
2️⃣ **「経営と現場をつなぐ」**
賃上げを経営判断として掲げ、現場の社員にも意義を共有する。
3️⃣ **「継続的に改善を行う」**
一度きりの投資ではなく、毎年の改善サイクルを仕組み化する。
この3つを意識することで、助成金の効果は長期的な経営改善へとつながります。
---
### 10. まとめ:賃上げを「コスト」ではなく「投資」に変える
派遣会社にとって、賃上げは避けて通れないテーマです。
しかし、それを単なるコストとして捉えるのではなく、
**「人材育成と生産性向上のための投資」**として位置づけることで、経営の質は確実に高まります。
「業務改善助成金」は、その実現を後押しする強力な制度です。
賃上げ、人材育成、システム投資――これらを一体として考え、
国の支援を上手に取り入れることで、派遣業の競争力を次のステージへ引き上げましょう。
---
📎 **参考リンク:**
厚生労働省「業務改善助成金」
👉 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/zigyonushi/shienjigyou/03.html
---
💡 **社労士としてのひとこと**
助成金の申請は「正確な計画づくり」が最も重要です。
「自社の計画は対象になる?」「賃上げ額はどの程度が妥当?」
そんな疑問をお持ちの派遣会社様は、ぜひ専門家に一度ご相談ください。
私たち社会保険労務士は、制度を“現場で活かす”ための具体的な支援を行っています。
当ホームページのお問合せ・相談フォームから、お気軽にお声がけください。
初回のご相談は無料です。
#業務改善助成金 #派遣会社 #人材育成 #賃上げ支援 #生産性向上 #社労士ブログ
マージン率等の情報提供」は作成して終わりじゃない!派遣会社が押さえるべき公開義務とは 2025.10.08
今回は、派遣会社の皆さまにとって毎年欠かせない業務、
「派遣事業報告書」および「マージン率等の情報提供」について、
特に“インターネットでの公開義務”をテーマにお話しします。
実務の現場では、「マージン率等の情報提供書を作ったから終わり」と思っている方がまだまだ多いのが現状です。
しかし、実はそれだけでは義務を果たしたことにはなりません。
今回は、その理由と、正しい対応方法を具体的に解説します。
---
## 1. 「マージン率等の情報提供」って何のためにあるの?
まず最初に、「マージン率等の情報提供」とは何かをおさらいしましょう。
派遣会社は毎年、派遣労働者の数や派遣料金などをまとめた「派遣事業報告書」を労働局に提出します。
その内容の一部を基に、「マージン率」や「教育訓練の実施状況」などをまとめた資料を社外に公開する義務があります。
この「情報提供」は、派遣労働者や派遣先企業に対して、
派遣会社がどのような運営をしているのかを透明に示すための仕組みです。
たとえば、
・派遣料金のうちどれくらいが派遣スタッフ本人の賃金として支払われているのか
・教育訓練や福利厚生の内容はどうなっているのか
といったことを、社会に対して明らかにするためのものです。
つまり「情報提供」は“信頼の証”。
これを正しく行うことで、派遣会社としての信用力が上がり、
結果的に派遣先・派遣スタッフから選ばれる会社になっていくのです。
---
## 2. 「作って終わり」はNG!“提供”とは「広く一般に公開すること」
では、「情報提供」を作成したあと、どうすればいいのでしょうか。
「派遣報告書控えと一緒に保管しておけばいいのでは?」
そう思っている方も少なくないはずです。
しかし、それでは“情報提供”とは言えません。
厚生労働省の定義する「情報提供」とは、
単に資料を作成して持っているだけではなく、
「誰でも自由に見られるようにすること」を意味します。
つまり、「広く一般に」公開することが求められます。
具体的には、
・自社社員だけが閲覧できる共有フォルダ
・派遣先への限定メール送信
・社内掲示板への掲載
――これらはいずれも「情報提供」とはみなされません。
対象は“世の中のすべての人”。
派遣スタッフ、派遣先企業、求職者、そして第三者までも、
誰もが自由に閲覧できるようにする必要があるのです。
---
## 3. 「インターネットでの公開」が原則になった理由
ここでポイントとなるのが、「どのように情報を提供するか」です。
以前は、
「自社オフィスに書類を備え付ける」など、紙での提供も認められていました。
しかし現在は、厚生労働省の方針として「原則インターネットによる公開」が求められています。
派遣報告書の控え(第5面)にも、
「情報提供の方法」として次の3つの選択肢があります。
- インターネット
- 書類の備え付け
- その他
一見、どれを選んでもよいように見えますが、
実際には「原則としてインターネットの利用による情報提供が必要」と明記されています。
つまり、この欄はアンケートではなく“正解のある問題”。
「インターネット」に〇を付けるのが正しい対応なのです。
---
## 4. 「HPがない会社はどうすればいいの?」という疑問
「うちはホームページを持っていない。公開のためにHPを作らなきゃいけないの?」
――そんな疑問を持つ方も多いと思います。
結論から言うと、ホームページがなくても大丈夫です。
厚生労働省が提供している「人材サービス総合サイト」を使えば、
無料でインターネット上に情報を掲載することができます。
---
## 5. 「人材サービス総合サイト」での掲載手順
では、その具体的な方法を見ていきましょう。
① まずは、厚生労働省の「人材サービス総合サイト」にアクセスします。
👉 https://jinzai.hellowork.mhlw.go.jp/JinzaiWeb/
② トップページにある「掲載の申込を行う場合」から、
「労働者派遣・職業紹介事業共通」をクリックします。
③ 画面が開いたら、
「マージン率等の情報提供」の内容を入力します。
あるいは、PDF化した資料をアップロードする方法も可能です。
(PDF添付のほうが簡単でおすすめです。)
④ 会社の情報(派遣許可番号、派遣元責任者氏名など)を入力し、「申込」をクリック。
⑤ 厚生労働省の職員が内容を確認し、問題がなければ公開されます。
ただし、即日反映ではなく、反映まで数週間~数か月かかることもあるため、余裕を持って申請しておきましょう。
---
## 6. 掲載後の確認方法
公開されたかどうかは、次の手順で確認できます。
1️⃣ 「人材サービス総合サイト」のトップページで「検索を行う場合」をクリック
2️⃣ 「労働者派遣事業」を選択
3️⃣ 県名や社名を入力して検索
4️⃣ 検索結果に自社名が表示されたら「詳細情報」をクリック
ここに、自社が申請した「マージン率等の情報提供」が掲載されていれば完了です。
---
## 7. 自社HPで公開する場合の注意点
もちろん、自社ホームページで公開する方法もOKです。
ただし、注意が必要なのは「誰でも見られる状態」にしておくこと。
たとえば、
- IDやパスワードを入力しないと見られない
- 社員専用ページに掲載している
といったケースは「情報提供」として認められません。
一番確実なのは、
① 自社HPに掲載する
② 人材サービス総合サイトにもそのURLを登録する
この2ステップです。
実際に、労働局から「自社HPだけでなく、人材サービス総合サイトにも掲載してほしい」と依頼されることもあります。
URLを入力するだけで済むので、両方やっておくのが安心です。
---
## 8. 情報更新を忘れないで!
「一度掲載したら終わり」と思っていませんか?
実は、ここにも落とし穴があります。
マージン率等の情報提供は、毎年の派遣事業報告書に基づいて作成するもの。
したがって、毎年の更新が必要です。
実際、数年前のデータをそのままにしている会社も少なくありません。
しかし、これは労働局の調査で指摘されることがあります。
報告書の作成・提出後は、
「控えの返却」→「マージン率等の情報提供作成」→「公開」までを
一連の流れとして、スケジュールに組み込んでおきましょう。
---
## 9. 派遣スタッフへの周知も忘れずに
インターネットに掲載しただけでは、“社内周知”としては不十分です。
派遣スタッフに対しても、
「公開した旨」と「URL」をメール等で伝えることが望ましいです。
「どこに載っているかわからない」では意味がありません。
スタッフの方々にとっても、
「自分の働いている会社は透明性がある」と感じられることが大切です。
これは単なる義務対応ではなく、
企業イメージや信頼性を高めるうえで非常に有効です。
---
## 10. まとめ:「公開」までが業務。透明性こそ信頼の第一歩
ここまでを整理すると、派遣報告書関連の流れは次のようになります。
1️⃣ 派遣報告書に必要な情報を集計(5月頃まで)
2️⃣ 派遣事業報告書を労働局へ提出(6月1日〜30日)
3️⃣ 労働局からの照会に対応
4️⃣ 控え返却後、「マージン率等の情報提供」を作成
5️⃣ 人材サービス総合サイトまたは自社HPで公開
この「⑤」までが一連の業務です。
ここまで完了して、ようやく「派遣報告書業務が終わった」と言えます。
---
派遣業務は年に一度の定期的な対応ですが、
ちょっとした勘違いや見落としが「法令違反」につながることもあります。
しかし、手順を理解してしまえば決して難しくはありません。
「マージン率等の情報提供」を正しく公開することは、
単なる義務ではなく、
「誠実に事業を運営しています」という会社の姿勢を社会に示すチャンスです。
透明性を大切にし、
派遣スタッフ・派遣先・行政のすべてから信頼される会社を目指しましょう。
お困りの際は、当ホームページのお問合せ・相談フォームから、お気軽にお声がけください。
初回のご相談は無料です。
※参照記事リンク)
https://jinzai-biz.com/private_article/10741/
※参照)厚生労働省「派遣会社のマージン率等について」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000077386_00013.html
#派遣業界 #マージン率 #社会保険労務士 #人材サービス総合サイト #労働局対応 #コンプライアンス #派遣事業
厚労省が発表!ストレスチェック義務化の対象拡大で派遣会社が注意すべき3つの点 2025.10.06
## はじめに:ストレスチェック義務化がすべての企業へ
厚生労働省は、従業員のメンタルヘルス状態を調べる「ストレスチェック制度」を、
**全ての企業に義務化する方針**を正式に打ち出しました。
これまでストレスチェックの実施が義務付けられていたのは「従業員50人以上」の企業のみ。
一方、50人未満の事業所、いわゆる零細企業や個人事業主を中心とした小規模事業所については、
努力義務にとどまっていました。
しかし、今回の制度改正によって状況は一変します。
厚労省によれば、新たに義務化の対象となる事業所は**約364万カ所**、
対象労働者は**およそ2,893万人**にものぼります。
日本の企業の大半を占める中小・零細事業所が、新たに対応を迫られることになります。
---
## 背景:なぜ今、義務化なのか?
ストレスチェック義務化の背景には、
「職場におけるメンタル不調の急増」という深刻な課題があります。
厚労省によると、**精神障害による労災認定件数はこの10年間で約2倍に増加**。
2023年度には883件にのぼり、過労やハラスメント、長時間労働による心理的負担が
依然として多くの職場に存在していることが分かります。
また、2022年11月から2023年10月の間に「メンタル不調で退職や1か月以上の休業者が出た」
と答えた事業所は**13.5%**に達し、年々増加傾向です。
特に小規模事業所ほど、職場内の人間関係や仕事の偏りによるストレスが蓄積しやすく、
それに対するケア体制が整っていないのが現状です。
この状況を受けて厚労省は、ストレスチェック制度を「努力義務」から「義務化」へと
一段階引き上げる方針を決定。
今後、**労働安全衛生法の改正案**として国会提出が検討されています。
---
## 派遣業界にとっての意味:複雑な構造が浮き彫りに
この制度改正、派遣業界にとっては特に重要な意味を持ちます。
なぜなら、派遣労働者は「派遣元」と「派遣先」という**二重の職場環境**の中で働いているからです。
通常、ストレスチェックの実施主体は「雇用主」である派遣元事業主。
しかし、実際に日々の業務を行うのは派遣先企業であり、
ストレスの多くは派遣先の環境や人間関係、労働条件から生じます。
このため、制度の運用にあたっては次のような課題が想定されます。
- 派遣元がどのように派遣先の職場環境に関する情報を把握するか
- チェック結果をどの範囲で共有できるのか(個人情報・プライバシーの扱い)
- ストレスチェック結果を踏まえた「職場改善」をどちらの責任で行うのか
これらの点を明確にしないまま制度が動き出すと、
派遣元・派遣先間でトラブルや責任の押し付け合いが生じる可能性もあります。
---
## 注意すべき3つのポイント
では、派遣会社が今回の義務化を前に、具体的に注意すべきポイントは何でしょうか。
ここでは、社労士としての実務経験から「3つの観点」で整理します。
---
### ① 実施体制の整備【キーワード:ストレスチェック 体制構築】
まず最初のポイントは、「誰が」「どのように」実施するのかという体制づくりです。
ストレスチェックは、医師・保健師・看護師・公認心理師など、
専門職による実施が求められます。
しかし零細規模の派遣会社では、社内に専門職を配置するのは難しいため、
多くの場合は外部委託となります。
委託先を選ぶ際は以下を確認しましょう。
- 派遣労働者の就業形態に理解があるか(多様な職場に派遣されている点)
- オンライン対応が可能か(拠点が分散している場合)
- 結果の管理・保管が適切に行われるか(個人情報保護法への対応)
さらに、実施後の「高ストレス者への医師面接指導」や「結果のフィードバック」まで含めた
運用フローを社内で整備することが重要です。
---
### ② 派遣先との協力体制【キーワード:派遣先 情報共有】
次に大切なのは、派遣先との連携です。
ストレスチェックは個人のプライバシーに関わる情報であるため、
結果をそのまま派遣先に共有することはできません。
しかし、派遣先の職場環境に起因するストレスが多い場合、
派遣元だけでの改善は難しいのが現実です。
したがって、派遣契約書や労働者派遣契約に以下のような条項を追加・明確化しておくことが望まれます。
- 健康管理・安全衛生に関する協定書の締結
- ストレスチェック実施に関する情報共有ルール
- メンタル不調者発生時の対応フロー
こうしたルールが明文化されていないと、
「派遣先の環境が原因で体調を崩した場合、どちらが責任を負うのか?」という問題が
曖昧になりがちです。
今後の法改正を見据え、契約段階で「健康管理に関する取り決め」を盛り込むことが、
派遣元にとってのリスクヘッジになります。
---
### ③ 結果を活かす“職場改善”への取り組み【キーワード:職場環境 改善】
ストレスチェックは「やったら終わり」ではありません。
むしろ本質は、「チェック結果をどのように活かすか」にあります。
チェックの結果、特定の職場や部署で高ストレス者が多い場合、
その背景には「業務量の偏り」や「コミュニケーション不足」など、
構造的な問題が隠れていることが多いです。
派遣会社としては、以下のような取り組みを行うことが効果的です。
- 派遣スタッフ向けアンケートによる定期的な職場満足度調査
- 派遣先担当者へのフィードバックと職場環境改善の提案
- メンタルヘルス研修・カウンセリング窓口の設置
これにより、派遣スタッフが安心して働ける職場環境を維持でき、
結果的に定着率や派遣先からの信頼にもつながります。
---
## 厚労省の支援と今後のスケジュール【キーワード:労働安全衛生法 改正】
厚労省は、零細事業所の対応を支援するため、
ストレスチェックの運用マニュアルや事例集を作成する方針を示しています。
特に「プライバシー保護の方法」や「結果の管理体制」については、
今後明確なガイドラインが提示される見通しです。
労働政策審議会の安全衛生分科会で議論が進められ、
**2025年度中にも労働安全衛生法改正案が国会提出される可能性**があります。
つまり、実施は早ければ**2026年度以降**になる見込みですが、
準備には時間がかかるため、今のうちから体制づくりを始めておくことが得策です。
---
## 義務化をチャンスに変える「健康経営」の視点【キーワード:健康経営 派遣スタッフ】
ストレスチェックの義務化を「負担」と感じる企業も多いでしょう。
しかし、視点を変えればこれは**企業の魅力を高めるチャンス**でもあります。
職場の心理的安全性を高めることは、
派遣スタッフの定着率向上・ミスマッチの減少・生産性の向上に直結します。
いわば「人を大切にする企業文化」の形成です。
また、ストレスチェックの結果を定期的に分析し、
「派遣スタッフが働きやすい職場ランキング」などの指標を作ることで、
採用力の向上にもつながります。
---
## 社会保険労務士がサポートできること【キーワード:社労士 ストレスチェック 支援】
社会保険労務士としては、以下のような支援が可能です。
- ストレスチェック制度の設計・運用支援
- 派遣元・派遣先の役割分担に関する協定書の作成
- 結果を活用した職場改善施策の提案
- 高ストレス者対応や復職支援に関する助言
特に中小・零細の派遣会社では、限られた人員で制度運用を行うため、
「外部の専門家との連携」が実効性を高めるカギになります。
---
## まとめ:ストレスチェックを「義務」ではなく「投資」に
今回の義務化拡大は、
単なる法令遵守の話ではなく、企業の持続可能性に関わるテーマです。
人が定着し、安心して働ける環境を整えることは、
これからの時代の“企業競争力”そのもの。
派遣会社としては、
「法対応をいち早く整える企業」ではなく、
「制度を上手に活かして人を守る企業」になることが求められています。
ストレスチェックを「やらされる義務」ではなく、
「人と組織を成長させる投資」として捉える。
その一歩を、今から踏み出すことが大切です。
---
📘 **まとめポイント**
- 厚労省がストレスチェックの義務化対象を全企業に拡大
- 派遣会社は「体制整備」「派遣先との協定」「職場改善」が3大テーマ
- 義務化は2026年頃の見込み。今から準備を進めることが重要
- ストレスチェックは“健康経営”への第一歩
- 社労士による制度設計・運用支援を活用し、安心して対応を
---
社会保険労務士として、派遣会社の皆さまが安心して制度対応を進められるよう、
実務に即したサポートを行っています。
お困りの際は、当ホームページのお問合せ・相談フォームから、お気軽にお声がけください。
初回のご相談は無料です。
※参照記事)
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA1132D0R11C24A0000000/
※参照リンク)厚生労働省「ストレスチェック等の職場におけるメンタルヘルス対策・過重労働対策等」
https://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/anzeneisei12/index.html
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- 厚労省が発表!ストレスチェック義務化の対象拡大で派遣会社が注意すべき3つの点
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セミナー、研修、講演開催
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講演内容、業種、出席者数に関わらず、すべて定額の時間単価とさせて頂きます。業界きっての画期的な明朗会計です。
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「料金交渉が不要で助かります」
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などなど、多くのお客様に喜ばれております。
セミナーについて
当事務所セミナー会場(27Fスカイラウンジ)で、当事務所が独自にテーマを設定し、お申し込み頂いた、複数の会社様にご参加頂くものです。
セミナー開催実績例
- 介護事業者様向け「改正介護保険法セミナー」
- 介護事業者様向け「介護労働環境向上奨励金セミナー」 3回
- 新規採用をお考えの事業者様向け
「元ハローワーク職員が教える!求人助成金セミナー」 - 飲食店様向け「元ハローワーク職員が教える!求人助成金セミナー」
講演について
当事務所代表が会社様や、ご同業者の集まりに訪問し、ご依頼されたテーマ(一般的な課題)について原稿を作成し、講演するものです。
講演実績
日本経営開発協会様 御紹介
市川港開発協議会様 主催 研修
「マイナンバー通知開始!
今知りたいマイナンバー制度の傾向と対策」
【参加者様からのお声】
- 非常に分かりやすく、90分飽きさせることのない素晴らしいものだった。
- 非常に役に立ち、興味が持てる内容だった。
- 普段は講義に集中するのは難儀なのだが、話のスピード、声のトーン、間、どれを取っても感心するばかりだった。
- マイナンバーが今後いろいろな問題を引き起こす可能性があることがよくわかり、大変勉強になった。早期に確実な運用体制を社内に確立させなければと思った。
一般社団法人 港湾労働安定協会 様 主催
雇用管理者研修「職場のメンタルヘルスに関して(会社を守る職場のメンタルヘルス対策)」
【参加者様からのお声】
- メンタルヘルス対策は今後も重要になってくると思うので、このような研修会を増やして貰いたい。
- 社会保険労務士による内容を次回もお願いしたい。
- メンタルヘルス関係で初めて面白い(役に立つ)情報が聞けたと思います。
- 大変に良い研修ですので、これからも続けて貰えるとありがたいです。
- 中間管理職として守るべきというか、部下に対してどのような人事労務管理をすればよいのか、中小企業向けに別途講習会をやってほしいと思った。
- 株式会社LEC 様 主催
「介護雇用管理研修」業務委託登録講師 - 株式会社フィールドプランニング 様 主催
「派遣元・派遣先責任者講習」業務委託主任講師 - 神奈川韓国商工会議所様 主催
経営者セミナー「お役立ち助成金講座
(雇用の確保と5年ルールへの対応策)」 - 日本経営開発協会様 御紹介
株式会社根布工業様 主催
安全大会「入ってないと、どうなっちゃうの?社会保険のこわ~いお話」
泉文美 講師紹介ページ
研修について
当事務所代表が、会社様のご依頼に基づき、会社様の具体的な人事労務に関わる内容(個別事案)について、オーダーメイドのプログラムを作成し、社員の皆様に研修するものです。
研修のご依頼例
- 就業規則を変更したので、わかりやすい説明会を開いてほしい
- 給与規定を見直したので、従業員に説明をしてほしい
- 従業員向けの、接客マナー、敬語などのレッスン会をしてほしい
執筆のご依頼
雑誌・メルマガ、HPコラムなど、ご希望に沿ったテーマで記事を執筆いたします。
掲載履歴
HP記事執筆
ハッケン!リクナビ派遣に「働き改革!派遣社員が選べるふたつの雇用とは」と題する記事を執筆しました。
「近代中小企業」2月号
「近代中小企業」2月号に記事を執筆しました。
「元ハローワーク職員が教える!ハローワーク求人&助成金活用法」
「SR」 9月号
ハローワークを始め、社会保険事務所(現:年金事務所)、労働基準監督署でも勤務経験を持ち、「お役所の裏事情に詳しい社労士」として定評のある我がみなとみらい人事コンサルティング代表。
ハローワークでの勤務経験を買われ、日本法令様出版の「SR 9月号」に記事を執筆しました。
(第27号 2012年8月6日発売)


